ニシンについて
子孫繁栄の縁起物として古くから正月料理や伝統料理に欠かせないニシン。
春になると産卵のために浅瀬に移動してくることから「春告魚(はるつげうお)」の別名があります。
ニシンの卵は有名な「数の子」でこちらも縁起物として知られています。
そんなニシンは犬猫が食べても大丈夫なのでしょうか。
犬や猫はニシンを食べても大丈夫!
犬や猫はニシンを食べても大丈夫です。ニシンのような魚類は猫も喜んで食べてくれることが多いです。
ただし与える際にいくつか注意点があるので紹介していきます。
小骨に注意!
ニシンは小骨が多い魚です。
犬猫は人間のように骨を自分で取り除いて食べることはできませんし、草食動物のように食べ物をよくすり潰してから飲み込む習慣もありません。
そもそも歯のつくりがそういう風に出来ておらず、植物を主食とする草食動物は草をよくすり潰すために奥歯が発達しています。
それに対して肉食動物の猫や肉食寄りの雑食動物の犬は狩りのためや肉を噛みちぎるために前歯や犬歯(人間でいう八重歯)が発達しています。
元々食べ物を噛んでから飲み込むという習慣があまりない犬猫ですが、それに加え飼い猫や飼い犬の多くはほとんど噛む必要の無いペットフードを主食としているため食べ物を噛むことに慣れていません。
もし愛犬愛猫がニシンの小骨を飲み込んでしまって消化器官に刺さってしまったら、最悪の場合外科手術が必要になる場合もあるので必ず小骨は取ってあげましょう。
生食はNG!
にしんそばや煮付けのイメージが強いニシンですが実は生食用のニシンも販売されていて、スーパーなどではあまり見かけませんが産地の北海道などから取り寄せることが可能です。
私たちはお刺身でも美味しくいただけるニシンですが犬猫に生で与えるのはおすすめできません。
チアミナーゼ
生のニシンには「チアミナーゼ(アノイリナーゼ)」という酵素が含まれており、この酵素は体内のチアミン(ビタミンB1)を破壊してしまいます。
チアミンは体内で炭水化物代謝や脂質代謝など様々な代謝に関わっているとても重要な栄養素です。
チアミンが著しく不足することで「チアミン欠乏症」になってしまうと食欲低下・唾液分泌過多などの症状が現れ、
その後正しい処置を行わないと運動機能障害・痙攣・不全麻痺などにつながり昏睡状態から死に至る危険性もあります。
チアミナーゼは加熱することにより活性を失うので犬猫にニシンを与える際は必ず加熱しましょう。
寄生虫
ニシンには有名な寄生虫「アニサキス」が寄生している可能性があります。
アニサキスは主に内臓に寄生しますが身に移動していることもあるので注意しましょう。
また、アニサキスに続く寄生虫になる可能性があると最近注目されているのが「コリノソーマ」という寄生虫です。
アニサキスは体内で胃に噛みつくのに対しコリノソーマは腸に寄生します。小腸の内視鏡検査は限られた施設でしかできないため発見できない場合もあるそうです。
アニサキスもコリノソーマも加熱調理することによって死滅するので犬猫に与える場合は加熱調理し、皆様がもしニシンのお刺身を食べる場合は十分注意してください。
ニシンに含まれる代表的な栄養素
生 可食部100gあたり
栄養素 | 含有量 |
---|---|
エネルギー | 196kcal |
たんぱく質 | 14.8g |
脂質 | 13.1g |
炭水化物 | 4.7g |
ビタミンB2 | 0.23mg |
ビタミンB6 | 0.42mg |
ビタミンB12 | 17.0μg |
参考資料:八訂 食品成分表 2022
たんぱく質
たんぱく質は動物性の食材に多く含まれている栄養素で生き物のからだを作るために欠かせません。
皮膚・被毛・内臓・骨などからだのありとあらゆるものの材料になるとともに犬猫が活動するためのエネルギー源にもなります。
摂取しすぎると肥満の原因となるので注意しましょう。
ビタミンB群
ニシンにはビタミンB群が豊富に含まれています。
ビタミンB2
皮膚や被毛の健康維持や脂肪をエネルギーに変える役割があるビタミンです。
欠乏すると乾皮症や光線過敏症になる恐れがあります。
ビタミンB6
アミノ酸代謝をはじめ、脂質代謝・炭水化物代謝・血液代謝と体内の様々な代謝に関わっているビタミンです。
ビタミンB6の役割については今なお研究が進められています。
ビタミンB12
分子中に「コバルト」というミネラル含んでいるビタミンで、骨髄の造血作用やたんぱく質の合成に欠かせません。
ビタミンB12はたんぱく質と強く結合しているため動物性の食べ物が主食の犬猫はほとんど不足する心配はありませんが不足すると悪性貧血・成長抑制・神経障害などの原因となるので注意しましょう。
犬や猫にニシンを与える際の注意点
犬猫にニシンを与える際の注意点を紹介します。
鮮度が落ちたニシンは絶対に与えない
ニシンは「ヒスチジン」というアミノ酸を持っており、このヒスチジンは鮮度が落ちると「ヒスタミン」という物質に変化します。
このヒスタミンを食べることによって引き起こされるのがヒスタミン中毒という食中毒です。
ヒスタミン中毒になると下痢・嘔吐・皮膚の腫れ・食欲不振などの症状が現れます。
また、ヒスタミンは一度生成されると加熱しても活性を失わないため、鮮度が落ちたニシンは例え火を通したとしても犬猫に与えるのは辞めて飼い主様も食べないようにしましょう。
アレルギーに気をつけて
犬猫にも人間と同じように魚にアレルギーを持っている場合があります。
初めてニシンを与える場合は少量に抑え、食べた後の様子をよく観察してあげましょう。
皮膚の赤み・かゆみ・目の充血・嘔吐などのアレルギー症状が見られる場合はニシンを与えるのはやめ、症状が酷くなる場合には獣医師に相談しましょう。
犬や猫へのニシンの与え方
犬猫へニシンを与える場合はペットフードのトッピングとして与えるのをおすすめします。
手順は以下の通りです。
- 下処理したニシンを茹でる(塩茹でなどはせず普通のお湯でしっかり火が通るまで)
- 茹でたニシンの粗熱を取り身をほぐしながら小骨を取る
前述したとおりニシンは小骨が多い魚なので取り残しがないようにしっかり取り除いてあげましょう。
他に茹でて細かく刻んだ小松菜や大根おろしなども一緒にトッピングしてあげると野菜も一緒に摂ることが出来ます。
【まとめ】犬猫はニシンを食べても大丈夫
犬猫はニシンを食べても大丈夫です。注意点をおさらいしましょう。
- チアミナーゼが含まれているので生食はNG
- 寄生虫の面からも加熱調理がおすすめ
- ヒスタミン中毒の危険性があるので鮮度が落ちたニシンは与えない
今回はニシンについて紹介しました。
ぜひニシンを使った手作りご飯を考えてみてください。