夏の終わり~秋にかけてゼリー状の真っ赤な実を付けるのが特徴的なイチイの木。
寒さに強く、気温が低い地域の方がよく育つため、北海道や東北などの地域では生垣として利用されていることもあります。
そんなイチイは犬猫にとって安全な植物なのでしょうか。
イチイは犬猫にとって危険な場合もある!
イチイの赤い部分は甘味があり、食用にされることもあります。
しかし、それ以外の部分には有毒な成分が含まれており、誤食すると危険です。
今回はイチイの種子に含まれる成分や食べてしまった際の症状などを解説していきたいと思います。
イチイの基本情報
学名
Taxus cuspidata
科・属
イチイ科・イチイ属
原産地
日本・朝鮮・中国・ロシア
開花時期
3月~4月
別名
オンコ・アララギ・シャクノキ
花言葉
優秀・高尚・昇進・無念・悲しみ
赤い部分は実?
イチイは植物学上、裸子植物に分類される針葉樹です。
裸子植物には成長過程で果実になる「子房(しぼう)」という部分がないので果実を付けることはありません。
そのため、イチイの赤い部分は果実ではなく、種子を覆う「仮種皮(かしゅひ)」と呼ばれるものです。
同じような特徴を持つ植物にはイチョウなどがあり、いわゆる「銀杏」と呼ばれる種子を包んでいる匂いを発する部分が仮種皮です。
ちなみに私達が銀杏として食べている部分(殻を割った中身)は「胚乳(はいにゅう)」と呼ばれるものです。
イチイの仮種皮はその見た目が果実に見えることから、単に「果実」「果肉」「実」などと紹介されていることも多々あります。
※本記事でもわかりやすいように以後は「果実」と表記します。
イチイに含まれる有毒な成分
イチイの果実以外の部分には「タキシン」というアルカロイドの一種が含まれています。
タキシンを摂取すると心臓の機能に影響を及ぼし、嘔吐などの消化器症状のほか、筋力の低下や瞳孔の拡大を起こします。
さらに重症になると呼吸困難や不整脈、最悪の場合死に至る可能性もあります。
タキシンは犬猫の他にも馬や牛などの草食動物や人間に対しても有毒な成分で、実際に死亡例もあります。
種子に特に注意
タキシンはイチイの果実以外の部分全てに含まれますが、特に種子の含有量が多いです。
人間での致死量が4~5粒程度と言われており、体の小さな犬猫の場合は1粒食べてしまっただけでも危険と言えるでしょう。
種子は果実に包まれていることもあり、誤食してしまう可能性が高いため十分注意しましょう。
犬猫がイチイを食べてしまわないために
イチイは北海道や東北では外に生えていることが多い植物なので、犬の散歩中などには葉や枝にかじりつかないように注意しましょう。
また、イチイの木の周りには果実や種が落ちている可能性があり、食べると非常に危険なのでできるだけ近づけないようにしましょう。
果実は与えても大丈夫?
イチイの中で果実は唯一有毒な成分が含まれていないので食べても大丈夫と言えるでしょう。
ただし、与える必要は無いものなので無理に与えたり、たくさん与えるのはやめましょう。
食べさせる際はよく熟した果実の種を取り除いたものを少量だけにしましょう。
もしも果実以外の部分を食べてしまったら
万が一、犬猫がイチイの果実以外の部分を食べてしまったらすぐに獣医師へ相談しましょう。
特に種子は毒性が強く大変危険なため、一刻も早く動物病院で適切な治療を受けましょう。
重症化しないためにはできるだけ早い対処が重要になります。
また、前述したように人間に対しても危険な成分を含んでいるため、小さなお子様が誤って種を飲み込んでしまった場合などもすぐに病院へ行くようにしましょう。
ただし、既に飲み込んでしまったものを素人が無理矢理吐き出させようとすると、消化器官や内臓に負担がかかってしまう場合があるのでやめましょう。
種子を噛まずに丸呑みした場合はそのまま消化されずに便として排出されることもあるようです。
【まとめ】イチイは犬猫にとって危険な場合がある植物
イチイの果実部分には有毒な成分は含まれていませんがそれ以外の部分には最悪の場合死に至るほどの成分が含まれています。
今回紹介した危険な成分や食べてしまった場合の対処法についておさらいしましょう。
- イチイの果実以外の部分には「タキシン」という心臓や消化器官に影響を与える猛毒成分が含まれている
- タキシンは馬や牛などの草食動物や人間にとっても有毒で実際に死亡例もある
- タキシンは特に種子に多く含まれているため果実と一緒に飲み込んでしまったりしないようにする
今回は犬猫に対するイチイの危険性についてご紹介しました。
イチイの果実は甘味があり、北海道や東北の方は小さい頃からよく食べていたと言う方も多いようです。
しかし、種子にはとても強い毒性があるため犬猫やお子様の誤食には十分注意してください。