シキミとは
シキミ(樒・しきび)とは古くから仏教と深く関連がある植物で、邪気払いやお清めのために使われ、現代でも葬儀やお仏壇、お墓への供え物として広く用いられています。
このシキミは枝や葉にも香りがある常緑の樹木で、春に花を付け、秋頃に果実を成熟させます。
仏教に深く関わりがある植物なので、寺院や境内、墓地などに植えられる事が多く、家庭の庭木として利用されることはあまりありません。
しかし、シキミの全草、特に果実は猛毒があり、植物では唯一「毒物及び劇物取締法」の劇物に指定されているので注意が必要な植物です。
シキミの基本情報
学名:Illicium anisatum
和名:シキミ(樒)
科名 / 属名:マツブサ科 / シキミ属
花言葉:「猛毒」「甘い誘惑」「援助」
シキミに含まれる毒性成分
シキミの枝や葉、花、果実、種子に至る全草に毒性成分は含まれていますが、特に注意すべきは果実そして種子であるといわれています。
シキミという名の由来も「悪しき実」からついたとの説があります。
主な毒性成分は「アニサチン」であり、上記で解説したように全草が有毒です。
シキミの誤食によって起こる中毒症状例
- 嘔吐
- 下痢
- めまい
- けいれん
- 呼吸困難
- 意識障害
国内外でシキミの実の喫食による食中毒発生報告があり、人間だけではなく他の動物に対しても極めて強い毒性があるといわれています。
シキミの主な毒性である「アニサチン」は痙攣性神経毒であり、中毒症状としては痙攣や呼吸困難、意識期障害等が目立ちます。
軽症の場合、消化器症状として嘔吐や下痢、重症例は全身痙攣や意識障害を生じ、またシキミ中毒の研究によれば動物実験例で呼吸停止が認められたとの報告があります。
シキミの種子の人推定経口中毒量は60~120個であると考えられており、シキミ果実粉末の犬猫経口致死量は400㎎/kg。
各部位の毒性比は果皮(種子を取り囲んでいる果実の部分全部)を1とした場合、種子は1/4、根は1/7、葉は1/9、樹皮は1/10であり、全草の中では果実部分が一番毒性が強く危険とされています。
人間での死亡例は相当古い報告しか見当たりませんが、動物では酪農場での牛の痙攣や死亡例が2000年以降も報告されています。
シキミに似た植物との間違いに注意
シキミの実は香辛料でよく知られる「八角」によく似ており、英語名も八角はスター・アニス、シキミはジャパニーズ・スター・アニスであることから非常に似た存在であることがわかります。
実際に、八角に似ていることから誤って輸出され、ドイツで中毒事件が発生したことや、日本でも譲り受けた八角が本当はシキミだったため、食べた人が嘔吐や痙攣などの症状を起こしたとの事例があります。
種子は茶色くコロコロとした形状であり、ドングリやシイの実によく似ています。
こちらも山で拾ったシイの実などでパンケーキを作って食べたら嘔吐や全身痙攣を起こしたとして13人が入院した食中毒事件があり、調査の結果、シイの実と間違えて採取したシキミの種子の喫食による食中毒であったことが判明しています。
まとめ
犬猫はもちろん、シキミは私達人間にとっても危険な植物です。
「毒物及び劇物取締法」の劇物に指定されている植物でありながら、寺院や境内、墓地などで植えられていることや、仏壇へのお供え、葬儀などでも使用され、山野にも自生する植物なので、日常生活において比較的遭遇する機会のある植物です。
シキミの実や種子は食べても渋みや刺激もなく、煎ると香ばしい香りがするため有毒成分に気がつかないとの文献もあり、人間だけではなく犬猫でも気がつかずに飲み込んでしまう可能性は非常に高くあります。
犬猫や小さな子供のいる家庭では特に、身近に潜む中毒原因物質としてシキミを認識しておく必要があるでしょう。
参考:シキミの毒性
参考:シキミ中毒の1例
参考:シキミの実による食中毒