低カロリーで栄養豊富なさやいんげん
加熱したさやいんげんは犬猫が食べても大丈夫な野菜です。
約90%が水分で、可食部100gあたり23㎉と低カロリーな食材なので、肥満などでカロリー制限をしている愛犬、愛猫の食事にカサ増しとして利用できるのでダイエット中の強い味方となってくれるでしょう。
水分が多く、低カロリーと聞くと栄養に関してはあまり期待できないように思われるかもしれませんが、抗酸化作用が期待できるビタミン類や食物繊維、カリウム、豊富なアミノ酸と様々な栄養素が含まれています。
そのため、ダイエット中でなくても犬猫にとって健康的メリットがある野菜であるといえます。
この記事ではさやいんげんを与える際の注意点やメリットとなる栄養などを解説します。
さやいんげんを生で食べさせないで
春・夏に旬を迎えるさやいんげんは皮などを剥く必要もなく、スティック状で手に取って犬猫に与えやすそうなのでつい生のままポリポリと食べさせてあげたくなりますが、生で食べても大丈夫とは言えない野菜です。
さやいんげんを生で食べると嘔吐や下痢などを伴う食中毒、自己免疫疾患などを招くケースがあるからです。
これは豆類や穀物の外皮、未熟な果物などに含まれる特異的なたんぱく質である『レクチン』という成分がその原因とされています。
『レクチン』は加熱することで不活性化するため加熱したものであれば食べても大丈夫なので、愛犬、愛猫に当たる場合には必ず加熱したものを用意しましょう。
モロッコいんげんはさやいんげんの仲間
昨今スーパーでもよく見かけるようになったモロッコいんげんですが、海外の食べ物?食べ方が難しい?と敬遠しがちになってはいませんか?
さやいんげんはつるの有無、さやの長さや形などでさまざまに分類され、その数は数百種類ともいわれています。
一般的に流通されているさやいんげんは『どじょういんげん』と呼ばれる丸サヤ系のもので、モロッコいんげんはその中でもひらさやと呼ばれるさやいんげんの種類のひとつで、一般的な円筒系のさやいんげんに比べて甘みがあり、シャキシャキとした食感が特徴です。
低カロリーは一緒ですが、骨や歯の健康維持に役立つビタミンKが多く含まれています。
下処理はさやいんげんと同じで、両先端を切り落とし、スジがあれば取り除いてから沸騰したお湯で2分ほど茹でればOK!シャキシャキとした食感は犬猫も気に入ってくれそうです。
犬は甘みを感じる事ができるといわれているので、モロッコいんげんの甘みを喜んでくれそうです。
必須アミノ酸を網羅している?
必須アミノ酸とは、たんぱく質を構成する成分の中でも体内で合成できないため、食事から摂取することが必要であるアミノ酸の事をいいます。
この必須アミノ酸は犬では10種類、猫は犬と同様の10種類+必須栄養素のタウリンと併せて11種類といわれています。
さやいんげんにタウリンの含有は確認できませんが、犬では10種類中すべて、猫はタウリンを除く10種類の必須アミノ酸を摂れるとても優れた野菜といえます。
アミノ酸は内臓や筋肉に存在するたんぱく質を構成する成分なので、体内で合成できない必須アミノ酸は日々の食事から意識して摂りたい栄養素のひとつです。
参考:食品データベース(文部科学省)アミノ酸-可食部100g
犬猫にさやいんげんを与えるメリット
上記で解説したように、必須アミノ酸をほぼ網羅したさやいんげん。
他にも愛犬、愛猫にとって健康的メリットが望める栄養素がたくさんあります。ここではさやいんげんの栄養素やその効果について解説します。
β‐カロテン・ビタミンE・ビタミンC
さやいんげんには抗酸化に関わるビタミンがバランスよく含まれていて、その代表的なビタミンが、β‐カロテン、ビタミンE、ビタミンCです。
これらの強い抗酸化作用で酸化による老化の予防、皮膚や粘膜の健康維持などが期待されています。
カリウム
さやいんげんにはカリウムも豊富に含まれています。
カリウムはミネラルの一種で、浸透圧の調整などの働きをします。利尿作用が期待でき、ナトリウムを排出する事で塩分の摂り過ぎを調節する重要な役割を果たし、血圧を下げる効果も期待できます。
ただし腎臓病等の疾患などでカリウムの摂取制限がある犬猫は摂取量に注意してください。
食物繊維
さやいんげんはヘタやスジを除くだけでほぼ丸ごと食べられる野菜なので、食物繊維がしっかりと摂取できます。
食物繊維には老廃物やコレステロールの排出、便のカサを増し便通改善、腸内環境改善と様々な健康効果が期待されています。
さやいんげんの低カロリーな面と豊富な食物繊維はダイエットの愛犬、愛猫の強い味方になってくれるでしょう。
アスパラギン酸
さやいんげんにはアミノ酸の一種であるアスパラギン酸が含まれています。アスパラギン酸は疲労回復に役立つため人間のスポーツドリンクや栄養ドリンクにも配合されています。
疲労物質を燃焼させてエネルギーに換え、さらに疲労回復に必要なカリウムやマグネシウムなどのミネラルを各組織へ運びます。利尿作用もあり、体に有害なアンモニアを排出させる働きもあります。
犬猫にさやいんげんを与える際の注意点
スジ取りをして加熱後、小さく切ってから
さやいんげんは品種改良が進み、スジなしの品種も増えてきましたが、細いスジがあるものもあります。
犬猫は人より消化能力が低い事や、噛まずに丸飲みをしてしまう傾向にあるので、消化不良にならないようにスジがある場合は取り除き、硬い両端を切り落としてから加熱をして与えましょう。
生食で食べる危険性については上記で解説していますので、愛犬、愛猫の安全のためにも覚えておいてください。
前述しましたが、犬猫はよく噛まずに丸飲みしてしまう動物です。
切らずに長いスティック状のさやいんげんをそのまま与えてしまうと、喉や消化器官を詰まらせたり、消化不良を起こしてしまう危険があります。
下処理が済んださやいんげんは必ず小さめに切ってから食べさせてあげましょう。
食物繊維の摂りすぎやミネラルによる腎臓への影響
食感も良く、低カロリーで水分も食物繊維も豊富なのでカロリー制限中の食事のカサ増しに役立つさやいんげんですが、毎日のように大量に食べても大丈夫とは言えません。
カロリーが低いからといって主食になるほどの量を一度に与えてしまうと、その水分や食物繊維は下痢や嘔吐など消化不良の原因となってしまいます。
さやいんげんにはさまざまに幅広い栄養素が含まれていますが、その中にカリウムやカルシウム、マグネシウム、リンなどミネラルも含まれています。
猫に多く見られるストルバイト結石はリンやマグネシウムの過剰摂取を原因とする場合があり、結石ができれば排尿困難から腎臓機能の低下を引き起こしてしまう事があります。
ただしこれは毎日のように過剰摂取をしてしまった場合に考えられるケースなので、健康な犬猫は適量であればさやいんげんを食べても大丈夫です。
すでに腎臓の疾患がある場合にはカリウムやリンなどの摂取制限をされているケースがありますのでその場合には獣医師の指示を必ず優先し、手作りごはんやトッピングなどで与えたい場合には獣医師に相談しましょう。
愛犬愛猫にさやいんげんを与える場合は、主食となる総合栄養食のドライフードや手作りごはんにトッピング程度に使うと良いでしょう。
アレルギーに注意
さやいんげんはアレルギーを起こしやすい食材には含まれていませんが、さやいんげんはインゲン豆の若いさやごと未熟なうちに食べる野菜なので、愛犬、愛猫に豆アレルギーが確認できている場合には注意が必要です。
さやいんげんだけに限らずですが、初めての食べさせる場合にはごく少量から与え、食後に異変がないか注意観察をしましょう。
食後に下痢や嘔吐、発疹、口回りをかゆがるなどがあればアレルギー反応を起こしている可能性が高いので、早めに動物病院を受診しましょう。
また、上記で解説しましたが、さやいんげんは生食や加熱不十分による『レクチン』が原因となる食中毒にも十分に注意してください。
おすすめレシピ
さやいんげんの豆乳チーズ和え
①さやいんげんのスジを取り、両端を切り落としたら、沸騰したお湯で2分ほど茹で、ザルにあげて冷まします。
②粗熱がとれたさやいんげんを犬猫が食べやすいように小さく切っておきます。
②少量のクリームチーズorカッテージチーズに、豆乳、すりごまを混ぜて滑らかにのばし、切ったさやいんげんを和えたら完成。
クリームチーズは塩分が少なく、少量であれば犬猫が食べられるチーズです。更に犬猫の健康面に配慮するのであれば、カッテージチーズが簡単に手作りできますので、カッテージチーズを用意してつくると尚良いでしょう!
人用には、醤油と砂糖を少し混ぜるとおいしく頂けますので、愛犬愛猫と手作りごはんをシェアして楽しんでください。
まとめ
さやいんげんは水分も多く、さやごと食べるので食物繊維やビタミン、アミノ酸など様々ない要素が摂れる優れた野菜です。
さらに可食部100g中23㎉と低カロリーなので、ダイエットが必要で食事制限をしている犬猫にとって役立つ野菜でしょう。
さやいんげんは、インゲン豆の若い未熟なうちにさやごと食べる野菜なので、インゲン豆や大豆を食べる際に注意喚起されている『レクチン』による食中毒に注意が必要です。
このレクチンは加熱することで無毒化しますので、人はもちろん、犬猫に与える場合には必ず十分に加熱したものを食べさせてあげましょう。
食物繊維やビタミン類、必須アミノ酸を網羅したスーパーフードともいえるさやえんどうを上手に活用すれば、愛犬、愛猫の健康維持に活躍してくれるでしょう。
参考:食材大全(NHK出版)