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当サイトで使用している指標
犬猫の栄養基準値はAAFCO養分基準2016年度版を使用しています。
手作りレシピの成分値は日本食品標準成分表2020年版(八訂)を使用しています。
AAFCO養分基準(2016)
AAFCOの基準値は2016をベースとし、犬猫の一日に必要な栄養素量と比較を行っています。
その際、AAFCO養分基準と日本食品標準成分表2020年版(八訂)の記載の違いは以下のように変換を行っています。
AAFCOの記載 | 食品成分表の記載 |
---|---|
ビタミンA | レチノール ※NRC飼養標準(2006)ではビタミンA量としてカロテン類を含めないレチノール当量を用いているが、AAFO養分基準(2016)ではビタミンA含量が示されていて、βカロテンの考慮は不明なため |
ビタミンE | αトコフェロール |
チアミン | ビタミンB1 |
リボフラビン | ビタミンB2 |
ナイアシン | ナイアシン |
ピリドキシン | ビタミンB6 ※ビタミンB6にはピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンが含まれているがここではピリドキシンとイコールとする |
メチオニンシステイン | メチオニンは存在するため、システインの値はメチオニンシステインからメチオニンの値を差し引く |
フェニルアラニンチロシン | フェニルアラニンは存在するため、チロシンの値はフェニルアラニンチロシンからフェニルアラニンの値を差し引く |
AAFCO養分基準で用いられている単位から日本食品標準成分表で用いられている単位への変換
AAFCOの養分基準の栄養素(単位) | 日本食品標準成分表の栄養素(単位) | 値の変換計算 |
---|---|---|
ビタミンA(IU) | レチノール(μg) | ビタミンA(IU)×0.3 |
ビタミンD(IU) | ビタミンD(μg) | ビタミンD(IU)×0.025 |
ビタミンE(IU) | αトコフェロール(mg) | ビタミンE(IU)×0.67 |
コリン、塩化物の表記について
コリン、塩化物は日本食品標準成分表に記載がないため、ほとんど情報がありません。このため基本的に記載していませんが、総合栄養食など一部の手作りレシピには記載をおこなっています。
記載している手作りレシピはアメリカ農務省の栄養標準データベースであるUSDAのデータベース、もしくはthe complete no-fads-plain-facts guide to healthy eating(本)に記載の値を用いています。
もしくは塩化物については食品成分表のナトリウム値に塩素(原子量、35.45)とナトリウム(原子量、23)の原子量比を乗じて「塩素」量として用いています。
参考:イヌの維持期のAAFCO養分基準(2016)を満たす手作り食レシピの設計法
参考:USDA Database for the Choline Content of Common Foods Release Two
調理による栄養素の減衰について
調理による栄養素の減衰については食品成分表で考えられる範囲に留め、基本的に考慮していません。
調理前と調理後の重量変化率は食品成分表で判明しなかったものについては実際の調理時に重量を図ることで計算しています。
当サイトで表示している犬猫の基準値
犬の1日当たりのエネルギー要求量の求め方
PERの求め方、DERの係数はペット栄養管理学テキストブック掲載の計算式を採用しています。
PER=70×体重の0.75乗(kcal ME/日)
- 体重×体重×体重(愛犬の体重を3乗する)
- √(ルート)を2回押す
- 2の数に70をかける
犬のライフステージ(活動係数・エネルギー係数)
- 生後4か月までの幼犬:4.0
- 生後4か月から1年までの幼犬:2.0
- 避妊・去勢済みの成犬:1.6
- 避妊・去勢なしの成犬:1.8
- 肥満傾向の成犬:1.4
避妊・去勢済みの成犬3kgの場合
1日当たりのエネルギー要求量は256kcalとしています。
安静時のエネルギー要求量(RER)×ライフステージ=1日当たりのエネルギー要求量(DER)(1日に必要なカロリー)
160 kcal(RER)×1.6(ライフステージ)=256 kcal(DER)
避妊・去勢済みの成犬5kgの場合
1日当たりのエネルギー要求量は374kcalとしています。
234 kcal(RER)×1.6(ライフステージ)=374 kcal(DER)
避妊・去勢済みの成犬10kgの場合
1日当たりのエネルギー要求量は630kcalとしています。
394 kcal(RER)×1.6(ライフステージ)=630 kcal(DER)
猫の1日当たりのエネルギー要求量の求め方
PERの求め方、DERの係数はペット栄養管理学テキストブック掲載の計算式を採用しています。
PER=70×体重の0.75乗(kcal ME/日)
- 体重×体重×体重(愛猫の体重を3乗する)
- √(ルート)を2回押す
- 2の数に70をかける
猫のライフステージDERを求める係数(活動係数・エネルギー係数)
- 1歳までのの幼猫:自由菜食(2.5)
- 去勢・避妊済みの成猫:1.2
- 去勢・避妊なしの成猫:1.4
- 活発な成猫:1.6
- 肥満傾向の成猫:1.0
避妊・去勢済みの成猫2kgの場合
1日当たりのエネルギー要求量は141kcalとしています。
安静時のエネルギー要求量(RER)×ライフステージ=1日当たりのエネルギー要求量(DER)(1日に必要なカロリー)
118 kcal(RER)×1.2(ライフステージ)=141 kcal(DER)
避妊・去勢済みの成猫4kgの場合
1日当たりのエネルギー要求量は238kcalとしています。
198 kcal(RER)×1.2(ライフステージ)=238 kcal(DER)
避妊・去勢済みの成猫6kgの場合
1日当たりのエネルギー要求量は322kcalとしています。
268 kcal(RER)×1.2(ライフステージ)=322 kcal(DER)
なんで総合栄養食のペットフードを8割食べる想定の給与量を設定しているの?
人と動物では消化吸収率に差があり、当サイトでは修正アトウォーター係数を適用していないため
当サイトで求めているレシピのエネルギーなどは食品成分表から計算していますので、人用に計算された値を使用しています。
しかし人と犬猫では消化吸収率に差があり、犬猫の方が1gあたりから得られるエネルギーが少ないと考えられています。
このため当サイトで表示している栄養素量よりも実際に犬猫が活用できる栄養素量は少ないと考えられます。
例えば以下の表を確認してください。
人と犬猫が得られるエネルギー量
人(成分表2020(八訂)のエネルギー換算係数) | 犬・猫 | 差 | |
---|---|---|---|
たんぱく質1g辺り | 4kcal | 3.5kcal | 0.875倍 |
炭水化物1g辺り | 3.75kcal | 3.5kcal | 0.933倍 |
脂質1g辺り | 9kcal | 8.5kcal | 0.944倍 |
鶏もも皮なし100gの栄養素 | 人 | 犬・猫 |
---|---|---|
たんぱく質22g ※七訂の方法 | 22×4=88 | 22×3.5=64.77 |
炭水化物0g ※七訂の方法 | 0×3.75=0 | 0×3.5=0 |
脂質4.8g ※七訂の方法 | 4.8×9=43.2 | 4.8×8.5=40.8 |
摂取カロリー | 131.2kcal | 105.57kcal |
このようにたんぱく質、炭水化物、脂質各1gから得られるエネルギー量に人と犬猫では差があることがわかります。鶏もも肉100gあたりで10kcal程度少なくなっています。
このように犬猫では犬猫用の修正アトウォーター係数を用い、AAFCOでは修正アトウォーター係数が使用されていますが、NRCでは人用でも良いという見解があり、若干見解がわかれています。
参考:犬用総合栄養食における修正Atwater法による代謝エネルギーとボンブカロリーの比較
更に食品成分表の計算方法自体も2020年度版から変更されたこともあり、それまでの食品成分表よりも計算値上は少なくなっています。
参考:「八訂成分表」では「エネルギー」が変わります 女子栄養大学出版部
当サイトの各レシピの栄養計算表では食品成分表2022を用いていますが、八訂で採用されているアミノ酸組成によるたんぱく質や脂肪酸のトリアシルグリセロール当量を使用することについての文献や意見が確認できなかったため、たんぱく質、脂質は七訂の方法を用いています。今後変化していく可能性を踏まえて修正アトォーター係数は適用していません。
食品のエネルギー値については年々改良される部分であり、摂取栄養素量の誤差を少しでも少なくするという観点からも、できるだけ総合栄養食のペットフードから基本的な栄養素を摂取し、それを補佐したり、食事を楽しむという範囲で手作りレシピを与えていただければより安全に楽しく活用できると考えているからです。
栄養成分表に未記載の栄養素に配慮
日本食品標準成分表にはコリン、塩化物、タウリンの記載がありません。
このため犬猫に必要なそれらの栄養素量を計算で出すことが難しく、1日に必要な栄養素量について考えるために、手作りレシピを食べた場合でも1日の必要栄養素量を満たす総合栄養食のペットフードを8割程度食べることで計算のできない栄養素を補完しています。
また調理による栄養素の減衰については食品成分表で考えられる範囲に留め、基本的に考慮していないため、実際の栄養素には計算値と比較して過不足が生じるため、総合栄養食のペットフードを食べることで安定した摂取栄養素量の確保を行うようにしています。
また家庭で手に入りやすい食材を使用した手作りレシピでは、全ての規定の栄養素を平均的に摂取することは難しく、ひとつ、ふたつの値だけが過剰になり、全く含まれていない栄養素もあるといった過不足の大きな栄養バランスになりがちです。この場合足りていない栄養素は全て総合栄養食のペットフードで補うことになります。
もし手作りレシピの給与量を、配合量の多い栄養素が1日に必要な栄養素量を満たす給与量に設定してしまうと、足りない栄養素を補完できる量の総合栄養食のペットフードを摂取した場合、手作りレシピに配合量の多い栄養素は更に追加されることになります。
これを避けるために配合量の多い栄養素でも1日に必要な栄養素量の1/2以下程度を充足する給与量とし、総合栄養食を食べる余裕を与えています。
手作りレシピの1日の給与量目安に記載されている量を与えた場合、同時に紹介しているペットフードの参考給与量を与えても上限のある栄養素の上限値は超えないように計算されています。
気軽に既存のペットフード以外を与えられる環境を作りたいと考え、手作りレシピは少なめの給与量に設定し、総合栄養食のペットフードで補う形を取っています。