スズランは4~5月に花を咲かせる植物です。
日本でも観賞用に多く栽培され、野山に自生している事もあります細い花茎に鈴のような小さな花を下げるように咲かせます。
春の訪れを知らせるスズランはその可憐な姿で人気が高く、観賞用に栽培される事や花瓶で飾られることが多いでしょう。
しかしスズランは全草に毒性をもち、人間や犬猫が口にしてしまうと中毒症状を引き起こしてしまうので十分に注意が必要です。
スズランが持つ有毒成分
スズランが持つ毒の主成分はコンバラトキシンと呼ばれる強心配糖体の一種です。
他にも様々な毒素を含むといわれており、特定の部分だけではなく、花・葉・茎・根と全草に有毒成分が含まれます。
花が終わったあとに実る実にも毒性を含みますので、こちらも絶対に口にしてはいけません。
スズランを摂取した場合に起こる中毒症状は以下の通りです。
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 運動失調
- 徐脈
- 不整脈
- 眩暈
- 心不全
- 血圧低下
- 心臓麻痺
犬猫に対する致死量は明確に分かっていませんが、人間においての致死量は1kgあたり0.3mgといわれており、このことからスズランの強い毒性がうかがえます。
人間より小さく影響を受けやすい犬猫は、ほんのわずかな量であっても下痢や嘔吐、個体差によっては命の危険に至るほどの中毒症状を引き起こす可能性があるため、飼い主様は十分に注意が必要な植物です。
参考:スズラン毒(convallatoxin)の凝固機能に及ぼす影響
参考:食べると危険な毒草一覧
スズランの切り花を挿した花瓶の水も有毒
スズランは植物自体だけではなく、スズランを挿した花瓶の水を飲んでも中毒を起こすことが知られています。
この水の摂取による死亡報告もあることから、植物そのものと同様に注意が必要になります。
犬猫は用意した犬猫用の飲み水以外にも、少し目を離した隙にテーブルの上にあるコップの中の水など、人間がふいに置いた水分を舐めたり飲んだりするケースは多々あります。
花を活け替えるのに花瓶を置いておいたら犬猫が花瓶の中の水を舐めてしまうことは容易に想定できますので、スズランのように有毒成分をもつ植物は室内に置かないのが一番の対策でしょう。
参考:食品衛生の窓
スズランを触った手は必ず丁寧に洗いましょう!
スズランは口に入りさえしなければ問題はありません。
そのため、犬猫の届かない場所で栽培したり花瓶に挿して観賞を楽しむ場合があるかもしれません。
しかし置き場所に注意していても、スズランを触った手に花粉などがつく場合があります。
その手で室内のものを触ったり、犬猫とコミュニケーションをとれば、犬猫の口に入る可能性は十分に考えられます。
スズランを触った後は、必ず丁寧に手を洗う事を心がけましょう。
犬猫がスズランを食べてしまったら
飼い主様が十分に注意していても、少し目を離した隙に口にしてしまうことがあるかもしれません。
口にしたことが分かった場合、まだ口の中に残っているようであれば取り除いてあげましょう。
飲み込んでしまっている場合、どうしても吐かせたいと考えてしまいますが、素人の催吐処置は誤嚥などの危険があるのでおすすめできません。
たとえ少量であっても死に至る強い毒性をもつスズランなので、口の中のものを取り除けたたとしても、誤食、誤飲が分かった時点で速やかに動物病院へ連絡し、受診しましょう。
その際、スズランをどの程度口にしたのか、時間の経過や症状の有無などを観察し獣医師に伝えられるようにしましょう。
スズランに似た植物『スノーフレーク』も有毒成分が含まれる
スズランの見た目にそっくりな花を咲かせるスノーフレークはヒガンバナ科スノーフレーク属の植物です。
キジカクシ科スズラン属のスズランとは違う植物ではありますが、このスノーフレークにも嘔吐などの中毒症状を引き起こす有毒成分が含まれます。
人に関しては葉がニラに似ていることで誤食し中毒症状を起こしたケースがあり、厚生労働省からも口にしないように注意喚起がされています。
スズランと同様、スノーフレークも花壇や鉢植えなどで広く栽培されている植物なので、十分に注意する必要があります。
まとめ
スズランは全草、実や根に至るまで全てに有毒成分が含まれます。
人間や犬猫が口にすると、スズランが持つ強い毒性によって中毒症状を起こし、最悪の場合死に至るケースもあります。
また、スズラン自体だけではなく、スズランの切り花を挿した花瓶の水にも毒性があり、その水を飲んだことによる人間及び伴侶動物の死亡報告もあるため、花瓶の水にも十分に注意が必要です。
室内や犬猫の届く範囲にスズランを置かない事が最大の予防策ではありますが、散歩コースなどに自生するケースもあるので愛犬愛猫の行動範囲に危険な植物が無いか日ごろから注意しておくといいでしょう。
参考:イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科