充電式の電気機器が増えてきた昨今でも、乾電池はおもちゃ・リモコン・時計・懐中電灯など様々な機器に使用されています。
中でも「ボタン電池」や「コイン電池」と呼ばれる種類の電池は薄く、小さい形状から小型の機器に使用されることの多い電池です。
機器の軽量化や小型化に便利なボタン電池ですが、犬猫が誤飲すると危険なケースがあります。
今回はボタン電池の誤飲が犬猫にもたらす影響や対応策などをご紹介したいと思います。
誤飲の危険性
犬猫がボタン電池を誤飲するとのどに詰まらせてしまい、窒息を起こす可能性があります。
さらに、それだけでなく命に関わる危険性もあるのでご紹介します。
胃や食道に穴が空く!?
ボタン電池が胃や食道の内壁に張り付くと電気分解により電池の外側にアルカリ性の液体が生成されます。
このアルカリ性の液体はたんぱく質を溶かしてしまう性質があり、「化学やけど(化学熱傷)」という症状に至る可能性があります。
さらに重症化すると、消化器官に穴を開けてしまい命に関わる危険性もあります。
ボタン電池の種類
ボタン電池などの電池は大きく分けて以下の3種類が一般的です。
アルカリ電池
現在流通している乾電池で主流になっているタイプです。
電流が流れやすい性質を持つ水酸化カリウムが使用されており、パワーが大きいのが特徴です。
また、容量が大きく比較的長持ちするため、幅広い機器に使用されています。
マンガン電池
アルカリ電池より60年ほど前に発明された歴史の古い電池です。
パワーや容量はアルカリ電池よりも劣りますが、時間を空けることによってある程度電圧が復活するという特徴があります。
そのためリモコンやキッチンタイマーなどの小さな電流のオン/オフを繰り返すような機器に向いています。
値段がアルカリ電池よりもリーズナブルなのも特徴です。
リチウム電池
アルカリ電池よりもさらにハイパワーで長持ちするリチウム電池。
使用出来る温度幅が-40℃~60℃と広いため、スキー・スノーボード・雪山登山などの冬のレジャーでも活躍します。
リモコンや時計などでは性能を十分に発揮できない可能性もありますが、デジタルカメラやストロボライトなどの大電流域の機器におすすめされています。
ちなみに、充電することで繰り返し使用出来る「リチウムイオン電池」とは別物です。
マンガン電池 | アルカリ電池 | リチウム電池 | |
---|---|---|---|
価格 | 安い | 中間 | 高い |
パワー | 弱い | 中間 | 強い |
持続性 | 低い | 中間 | 長持ち |
推奨使用温度帯 | 5~45℃ | 5~45℃ | -40~60℃ |
人間も注意が必要!
ボタン電池は犬猫だけでなく、子供による誤飲も多いため消費者庁や政府広報から注意喚起されています。
実際の事故の例を見てみましょう。
- 「子どもがキッチンタイマーで遊んでいた。タイマーを確認すると、蓋が開いており、中身のボタン電池がなくなっていたため病院を受診した。レントゲンにて小腸内にボタン電池が確認された。」(0歳)
- 「保護者が数分目を離していた隙に、おもちゃに入っているボタン電池が出されていてそばに子どもがいた。2個入っているうち、1個しか見当たらず、子どもは咳き込んでいた。レントゲンで胃内にボタン電池が確認された。」(3歳)
- 「上の子が遊んでいた美顔器を誤って床に落とし、その際に外れたボタン電池を子どもが飲み込んだ。その後、ボタン電池が無くなっていることに家族が気付き、病院を受診した。レントゲンで胃内にボタン電池が確認され、カテーテルで摘出した。」(0歳)
- 「絵本の中のボタン電池を保護者が交換した。古いもの3個を子どもの手が届かない柵の奥、高さ80cmの棚に置いておいたが10分後に見たら1個しかなく、棚から床に落下していた。レントゲンで胃内にボタン電池が2個確認された。」(1歳)
参照:消費者庁「Vol.547 ボタン電池誤飲を防ぐために! 電池を使う製品は子どもの手の届かないところに置きましょう。」
ボタン電池を使用した製品で遊んでいる際に電池を取り出して誤飲してしまうケースが多いようです。
人間の場合でも犬猫と同じく、消化器官内の損傷の恐れがあります。
お肉を使用した実験
国民生活センターなどの機関では、鶏肉やハムを使用したボタン電池の危険性を示す実験が行われています。
ハムを使用した実験では、ボタン電池をハムで挟んだ5分後にハムが黒ずみはじめ、10分後には泡の出る強い化学反応があったようです。
鶏肉を使用した実験では、開始後20分ほどで接触面に大きくくぼみが出来ています。
化学反応の強さはパワーの強いリチウム電池が一番大きかったようです。
このように短時間でも強い反応が発生してしまうため、誤飲した場合には素早い対処が必要です。
ボタン電池の誤飲を防ぐために
犬猫のボタン電池の誤飲を防ぐために日常的に行えることをご紹介します。
電池の保管場所に気をつける
未使用を家に保管する場合は犬猫の手が届かないところで管理しましょう。
電池は高温多湿を避け、涼しいところで管理するとサビや劣化を防ぐことが出来ます。
冷蔵庫で保管する方法を聞いたことがあるかもしれませんが、結露が発生してしまうため推奨されていません。
電池ボックスをしっかり閉める
電池を使用する機器の電池ボックスはしっかり閉めるようにしましょう。
ネジで固定するタイプのものなら比較的安全ですが、そうで無いものは落とした弾みに電池が飛び出てしまったりする可能性もあります。
蓋を養生テープなどで固定しておくと犬猫だけでなく小さなお子様が勝手に開けてしまうのも防ぐことが出来ます。
捨てるときも注意
使い終わった電池の管理にも注意しましょう。
表面と裏面にビニールテープやセロハンテープを貼っておくと簡易的に絶縁出来るため万が一誤飲してしまった際に最悪の事態を免れる可能性が上がります。
また、電池はただの不燃ゴミではなくリサイクル品のため家電量販店や区施設などの回収BOXに入れるようにしましょう。
誤飲してしまった際の対処法
万が一、犬猫がボタン電池を誤飲してしまった場合は直ちに動物病院へ行きましょう。
前述したように短時間でも化学反応を起こし、消化器官を傷つけてしまう可能性があります。
実際の症例では、生後9ヶ月のチワワの飼い主がボタン電池の誤飲に気づかず、動物病院を受診したころには小腸に穴が空いていたということもあります。
この例では小腸の大部分を切除する必要があり、小腸から上手く栄養を吸収できなくなったこの子は半年経たずに亡くなってしまったようです。
早期発見で救える命もあるので普段から犬猫はよく観察するようにしてあげてください。
【まとめ】ボタン電池の誤飲は非常に危険!
- 窒息の危険性だけでなく、消化器官のたんぱく質を溶かして傷つけてしまう可能性がある
- 人間の場合もボタン電池の誤飲は非常に危険で消費者庁などから注意喚起されている
- 犬猫や子供の誤飲を防ぐには普段の保管方法や防止対策が非常に重要
今回はボタン電池を誤飲する危険性についてご紹介しました。
電池は日常的に欠かせないだけでなく、災害時などの電源が使えない状況で非常に役に立つ日用品です。
身近なものの危険性をしっかり把握して事故を防ぎましょう。