医薬品や化粧品の原料、保湿剤として馴染みのあるワセリンは、肌荒れや乾燥を防ぐ効果が期待され、子供から大人まで使われています。
犬や猫も皮膚トラブルや肉球が乾燥して硬くなってしまった時にワセリンを使用することがありますか、犬猫がワセリンを舐めてしまっても大丈夫なのでしょうか。
ワセリンとは
ワセリンは石油から得た炭化水素類を脱色、精製した保湿剤です。
ワセリンの種類
ワセリンは精製による純度で呼び名が変わります。
純度の低い順に「黄色ワセリン」「白色ワセリン」「プロペト」「サンホワイト」であり、医療用には白ワセリンまたは白ワセリンより純度が高いものが使われます。
犬猫はワセリンを舐めても大丈夫?
犬猫のケア用に作られたワセリンや、純度の高いワセリンであれば、犬猫が少量舐めてしまったとしても大きなトラブルは考えにくいでしょう。
ワセリンは安全性が高く、犬猫の皮膚や肉球、鼻の乾燥ケア、顎ニキビのふき取りケアなどに活用されています。
黄色ワセリンは比較的安く手に入りますが、純度が低くく敏感肌などの場合肌荒れを起こしてしまう可能性がありますので、犬猫専用の商品または白色ワセリン以上の純度が高いものを選びましょう。
過剰摂取は下痢や嘔吐の危険性
ワセリンは犬猫のケアに使用できますが、過剰に舐めてしまった場合には下痢や嘔吐といった症状を引き起こしてしまう事があります。
ワセリンを取り扱う製薬メーカーへ確認したところ、大量に摂取した場合に起こり得る下痢や嘔吐の症状は、ワセリンの油脂成分によるものという見解でした。
脂っこいものをたくさん摂取したときに気持ち悪くなったり下痢を起こしてしまうのと同様に、ワセリンでもそのような症状を起こす可能性があると考えられているようです。
犬猫はグルーミング(毛づくろい)で体を舐める習性があるため、塗ったワセリンを舐め取ってしまう事は十分に考えられるでしょう。
犬猫に使用するときは過剰に塗りすぎないよう注意し、ワセリンの保管場所にも注意しましょう。
石油由来のワセリンは危険?
石油から作られたと聞くと体に悪そうと思う方も多いかもしれません。
以前は不純物を多く含む石油由来の油(鉱物油)を使用した化粧品などが販売されており、それらの使用によって肌荒れを起こすことがあったため、石油から作られたものを使うのは体に悪いといったイメージがあったようです。
最近は精製技術の進歩によって医療用や化粧品などに使う鉱物油は十分に生成されており、またワセリンは古くから使われていますが特に副作用等はみられないため安全であると考えられています。
製薬メーカーである健栄製薬ではHP上で取り扱う製品の安全データシートを公開しています。
その中に白色ワセリンについての情報がありましたので一部抜粋して下記の表に引用させて頂きました。
有害性情報 | |
---|---|
急性毒性(経口) | ラットLD50 > 5,000 mg/kg |
急性毒性(経皮) | ウサギLD50 > 2,000 mg/kg |
急性毒性(吸入) | データなし |
発がん性 | マウスの経皮投与試験(80 週間、25 and 50 mg)において発がん性は認められなかった(IUCLID (2000))。 また、精製度の高い物質の発がん性は殆ど又は認められなかった(PATTY (5th, 2001))との記載がある。 |
生殖毒性 | ラットへの混餌投与試験(2 年間)において、高用量投与でも生殖器への影響は見られなかった(US HPVIS, 2011)。 |
商品に疑問や不安がある場合には、使用前にメーカーに確認をするといいでしょう。
舐める以外のワセリン使用時の注意点
人間用の商品に注意
人間用のワセリン商品の中には、より心地よく使用できるように香料やその他の成分を配合しているものも存在します。
犬猫は香料の種類によっては命の危険も考えられるような重篤な症状を起こしてしまう可能性があります。
上記でも解説しましたが、犬猫専用の商品を選ぶか純度が高く他の成分を混ぜていないものを選ぶようにしましょう。
アレルギー性接触皮膚炎の可能性
白色ワセリンにおいては、皮膚への刺激性が低いことが知られており、皮膚アレルギー反応を調べるパッチテストの基材としても使用されています。
しかし、稀にではありますが、白色ワセリンを塗布したことでアレルギー性接触皮膚炎を起こすといった報告があります。
初めてワセリンを使用する際には、念のためごく少量から試し、皮膚に異常がないか確かめることをおすすめします。
皮膚のトラブルが続く場合は動物病院を受診
ワセリンは保湿剤として犬猫の皮膚や肉球のケアに役立つこともありますが、万能薬ではありません。
犬猫の皮膚トラブルの原因は乾燥だけではなく、栄養状態やアレルギー、遺伝性や菌によるものなど様々です。
痒そうにしている、脱毛がある、炎症を起こしている等の症状がある場合には、動物病院で獣医師に相談することをおすすめします。
もちろん、犬猫がワセリン舐めてしまい何か異変を感じた場合も、すぐに動物病院を受診しましょう。
まとめ
犬猫は少量であればワセリンを舐めてしまっても大丈夫でしょう。
犬猫のケア用に作られたワセリンや純度の高いワセリンであれば、安全性も高く舐めてしまっても大きなトラブルは考えにくいです。
人間用の商品には香料や犬猫にとって毒性のある成分が使用されている可能性もあります。
犬猫のケアや自分で使用する際には、事前ににしっかり確認することが大切です。
参考:ASPCA