ヤトロファとは
ヤトロファはトウダイグサ科の植物で、その仲間は約170種存在し、いくつかの種類は園芸品種として流通しています。
中でもよく流通しているサンゴアブラギリやナンヨウザクラは、鮮やかな赤い花を咲かせることで人気があります。
また、種子から油を採取できるナンヨウアブラギリは、バイオ燃料として注目されています。
ヤトロファは低温には弱い性質があり、日本の冬場の気候では屋内で管理する必要がありますが、毒性成分が含まれる植物なので注意が必要です。
ヤトロファの基本情報
学名:Jatropha
和名:ナンヨウアブラギリ(南洋油桐)
その他の名前:ジャトロファ、タイワンアブラギリ、サンゴアブラギリ、ナンヨウザクラ
科名 / 属名:トウダイグサ科 / タイワンアブラギリ属(ヤトロファ属)
花言葉:「恋する伊達者」
ヤトロファの主な毒性成分
ヤトロファの仲間には毒性成分が含まれており、クルシン、フォルボールエステル、トリプシン阻害剤であると考えられています。
有毒部位は全株、種子や樹液に至るまで有毒であると考えられています。特に危険なのは種子である可能性が高いので、十分に注意しましょう。
ヤトロファの仲間による中毒症状例
- 嘔吐
- 下痢
- 過度のよだれ
- 腹痛
- うつ状態
主な症状は消化器系のものですが、摂取量や個体差によって下痢や嘔吐が長く続き、脱水症状や無気力な状態になるなど状態が悪化する場合があります。
犬の誤食による中毒事例が報告されている他にも、ラットにおけるヤトロファの毒性研究では、ジャトロファ・クルカスの種子をマウスにわずか1mg/kg体重 (bw) の量を給餌すると死亡するとの報告があります。
そのため当サイトとしては、種子の誤食量によっては命に係わるケースもあると考えています。
ヤトロファの乳液で皮膚炎が起きる
ヤトロファの茎や葉を傷つけると出る白い乳液(ラテックス)には、毒性成分が含まれており、皮膚に触れる事で皮膚炎やアレルギー反応を引き起こすことがあります。
症状としては赤みや腫れ、かゆみ、湿疹や水ぶくれ、刺激を伴う痛みなどです。
犬や猫は植物の茎をかじったり葉をおもちゃにして傷つけてしまう事がありますが、その際に乳液に触れてしまうとその接触した部分に上記のような症状が現れる事があります。
誤食はもちろんですが、接触もしないようにヤトロファの仲間の植物には近づけないようにしましょう。
また、人間の皮膚でもヤトロファの乳液による皮膚炎は起こりますので、手入れなどの際には手袋を着用しましょう。
犬や猫がヤトロファを食べてしまったら
犬や猫がヤトロファの仲間を食べてしまった場合、上記で解説した毒性成分の影響で中毒症状を引き起こす可能性が高くあります。
誤食が分かったら速やかに対応することが重要となります。
摂取量・摂取部位を確認する
ヤトロファは特に危険な部位は種子と考えられていますが、全草に毒性成分が含まれているので、どの部位であっても誤食があれば中毒症状を引き起こす可能性があります。
摂取量が多ければ多いほど、重い中毒症状を引き起こす可能性があるため、どの程度食べてしまったのかできる限り確認し、記録しておきましょう。
中でも種子は特に危険とされる部位なので、種子を食べてしまったかどうかも確認しておくといいでしょう。
乳液に触れていればすぐに洗浄する
ヤトロファの乳液は接触性皮膚炎を引き起こす可能があるため、皮膚に乳液が付着しているようであれば流水で流すようにしましょう。
症状の有無を確認
ヤトロファの誤食によって起こる中毒症状は摂取後すぐに起こる事もあれば、数時間後に症状が現れる事もあります。
犬や猫がどのような状態なのか、症状の有無、また症状が出ていればどのような症状なのかしっかりと観察し、獣医師へ伝えられるようにしましょう。
動物病院へ連絡
ヤトロファの仲間の誤食がわかったらすぐに動物病院へ連絡しましょう。
その際に、上記で確認した内容を伝える事で診察のヒントとなりますので、ヤトロファ(またその仲間の植物)を誤食した旨と確認できている情報を伝えましょう。
必要であれば誤食した植物の一部や写真等持参するのもいいでしょう。
自己判断で無理に吐かせない
犬や猫の口の中に植物の破片が残っているようであれば、慎重に取り除くことは有効ですが、獣医師の指示なく飲み込んでしまったものを無理に吐かせるのは大変危険です。
誤嚥など状態の悪化を招く可能性があるのでやめましょう。
まとめ
ヤトロファの仲間は有毒植物であり、誤食、接触共に注意しなければいけない植物です。
園芸品種はヤトロファの名前で流通していない場合もあるので「サンゴアブラギリ」「ナンヨウザクラ」などヤトロファの仲間の植物の名前に注意するようにできればと思います。
しかし、どのような植物でも犬や猫が居る環境下に配置する際には必ずその植物が有毒植物ではないか、犬や猫にとって危険はないか調べてから飾るようしましょう。
そうすることで、有毒植物による健康被害から愛犬、愛猫を守れます。
また、万が一の場合に備えて、近くの動物病院を調べておくことやかかりつけの動物病院の連絡先を手元に控えておくことも大切です。
参考:ヤトロファの基本情報(みんなの趣味の園芸 NHK出版)
参考:North Carolina Extension Gardener Plant Toolbox
参考:解毒されたジャトロファミール(ジャトロファ・クルカス)のラットにおける毒性研究
参考:ジャトロファの利活用のためのホルボール・エステルの毒性およびリスク管理の検討
参考:人もペットも気をつけたい 園芸有毒植物図鑑 著者: 土橋豊



