犬猫に山椒は与えないで!
山椒は日本各地の山野に自生しているミカン科の低木で、その香り高い若い新芽は『木の芽』と呼ばれ、果実は『実ざんしょう』、はじけた実の外皮を砕いた『粉山椒』として日本では古くから親しまれています。
山椒は漢方として使われるほど健康効果がある食材とされ、食欲増進や殺菌効果による腹痛や下痢の改善、香り成分による脳の活性化で内臓の働きを促進し、代謝をあげる効果などが期待されています。
しかし犬猫にとっては強すぎる刺激やその香り成分によって健康被害を及ぼす食材となりますので絶対に与えないようにしましょう。
山椒の特徴や注意点を解説します。
犬猫が山椒を食べてはいけない理由
辛み成分や痙攣毒の『キサントキシン』の存在
山椒を犬猫に与えてはいけない要因として、山椒の代表的特徴のひとつである痺れを伴う辛みにあります。
人間でもその痺れや辛みが苦手という方もいるくらいですから、その刺激は犬猫にとって強すぎるため、その辛みや痺れにストレスを感じたり、胃や腸などの消化器官やそのほかの内臓へも大きな負担をかける可能性があります。
また山椒の中に含まれる『キサントキシン』や『キトキシン酸』と呼ばれる成分は、魚や動物に与えると痙攣を起こす痙攣毒として知られています。
人間が摂取する分には問題の無い含有量でも、犬や猫のように人間より小さな動物への影響は大きくなります。
口からよほど一度に多量の山椒を摂取しない限り犬や猫が重篤な症状を引き起こすことはないと言われていますが、許容範囲を探りながらも与えたい食材では決してありません。
辛みという点で似た食材に『ワサビ』や『唐辛子』などがありますが、刺激が強いもの、辛みがあるものは基本的に犬猫に与えてはいけない食材と考えて良さそうです。
山椒に含まれる香り成分『リモネン』『シトロネラール』
山椒はミカン科の植物です。
そのため、山椒の爽やかな香りの由来は柑橘類と同様のリモネンなどが含まれています。
猫の場合
山椒に含まれるリモネンやシトロネラールは猫が中毒症状を引き起こす成分として知られています。
リモネンはレモンやグレープフルーツ、みかんなど柑橘類の皮に多く含まれる成分で『シトラスオイル中毒』と呼ばれる中毒症状を引き起こす要因となるうちのひとつとしてあげられています。
犬の場合
犬に関しては猫ほど注意する必要はないと言われてており、実際にリモネン等を使用した犬用の虫よけやしつけ用品が販売されていることもあります。
ただし、犬はとても嗅覚が鋭いので、山椒の香り自体が刺激が強すぎるものとなります。
中毒症状を起こさないからと言って、山椒の辛みや痺れ成分、そして強い刺激がある香りを無視することはできません。
リモネンやシトロネラールの摂取で猫に起こりうる中毒症状
- 過剰な涎
- 震え
- 低体温
- 運動障害
- 神経症状
中毒成分が含まれる以上、ごく少量であっても山椒を猫に与える事は危険であると考えます。
誤って山椒を口にした場合、中毒が懸念される猫はもちろん、犬にも異常がみられたら動物病院で受診しましょう。
マタタビのように猫が山椒で酔っぱらう?
爽やかな香りが特徴の山椒ですが、この香りを嗅いだり舐めたりした猫が酔っぱらったような行動を見せる事があります。
明確なことはわかっていませんが、山椒に含まれるサンショールに麻痺(局所麻酔)作用があるため、酔っぱらったような行動になる可能性があります。
ただし、山椒は猫が中毒症状を引き起こす成分が含まれているため、マタタビのように猫に少量なら与えてもいい食材とはいえません。
山椒の香りを好む猫も稀に存在するので、キッチンやテーブルにあるものに誘引され、舐めてしまったりすることがあるかもしれませんが、健康被害や中毒症状を引き起こす場合がありますので、山椒の保管に注意し、決してマタタビのように与えないようにしましょう。
犬猫が山椒を食べてしまったら
山椒は鰻料理についてくることや、実ざんしょうのつくだ煮、煮物や焼き物などに使われる木の芽、七味唐辛子の中に含まれていたりと様々な形で食卓に登場します。
食卓に並べた時に犬や猫が誤って舐めたり食べてしまったり、キッチンに置いてあった山椒が入った容器に犬猫の手がかかりその手を舐めてしまったなどあるかもしれません。
山椒は少量舐める程度で急激に重篤な症状を引き起こすほどの中毒性のある食材ではないと考えますが、食後の様子に異常があれば動物病院へ連絡し、獣医師の指示に従いましょう。
動物病院を受診する際には、いつ、何を、どの程度摂取したのかという情報が診断に役立つことがありますので、犬猫が食べた山椒が残っていればその物を持っていくことや、どれくらい食べたのか、時間の経過、食後に起きた症状を記録しておくとよいでしょう。
また、摂取後すぐに症状は出なくても数時間後、数日後に異常が現れる事もあります。
犬猫が食べてはいけないものを食べてしまった場合には、直後に異変が無くても数日間は注意深く観察してあげましょう。
自宅での催吐処置は誤嚥や健康被害の可能性
犬猫が山椒などの食べてはいけないものを食べてしまった場合、とっさに『吐かせなくては!』と考える飼い主は多くいると思います。
たしかに山椒等の食べてはいけないものを食べてしまった時、口にまだ残っていたり飲み込んでいない場合には口を開けて取り出すことが必要な場合がありますが、すでに飲み込んでしまったものを素人が吐かせるのは様々な危険があります。
吐かせようと口の中に指を入れたりすれば暴れてしまい、その際に吐しゃ物が気道へ入ってしまえば酷いむせや咳、呼吸困難を起こしてしまうかもしれません。
そして自宅での応急処置として塩やオキシドールを摂取させて吐かせる方法などを見る事がありますが、こちらも素人が行うには非常に危険性が高い行為であると考えます。
塩の過剰摂取で食塩中毒により嘔吐はするかもしれませんが、重篤な場合には意識の混濁など神経症状も引き起こしてしまう事があります。
オキシドールに関しては胃や食道の粘膜を重度に傷つけてしまうこともあるようです。
犬や猫は体が受け付けないものを食べた場合、自ら自然に吐くことがあります。
山椒は少量であれば急激に重篤な状況に陥る事は考えにくいので、飼い主は冷静に愛犬愛猫の様子を観察し、もし異変があるようであれば速やかに動物病院へ連絡し、獣医師の指示に従うようにしましょう。
まとめ
山椒は犬猫が食べてはいけない食材です。
山椒の痺れを伴う辛みは犬猫にとって強すぎるものであり、食べる事でストレスを感じたり内臓への大きな負担となる事があります。
また山椒はミカン科の植物で、山椒自体にリモネンやシトロネラールといった猫が中毒症状を引き起こす成分が含まれています。
犬に関しても猫ほど影響はないとされることはありますが、可能性はゼロではありませんので十分に注意が必要であると考えます。
もし誤って犬猫が山椒を食べてしまった場合には、直後に異変がなくても数時間~数日間に症状が出る場合もあるので、しっかりと注意観察が必要でしょう。
もし異変があれば、いつ、どのような山椒をどれくらいの量を食べたのか記録しておき、速やかに動物病院で受診しましょう。
山椒の清々しい香りやピリリとした刺激は人間にとって食事のアクセントにも健康効果も得られる有益なものと考えられますが、人間に良いものが犬猫にとって必ず良いものとは限りません。食材の特徴や注意点を確認し、愛犬、愛猫の健康的な食生活を守ってあげましょう。
参考:山椒のお話
参考:食材大全(NHK出版)