犬猫はスピルリナを食べても大丈夫!犬猫が吸収しやすいたんぱく質が豊富。汚染リスクに注意

スーパーフードとして有名なスピルリナは、ドックフードやキャットフードにも使われることが多くあります。

しかし、このスピルリナとはどのようなものなのかはっきりとわからないという方も多いのではないでしょうか。

この記事ではスピルリナについて解説します。

スピルリナって何?

スピルリナはNASAが宇宙飛行士の栄養補助食品として使用して有名になった”藻”の一種である藍藻で、30億年以上も昔に地球上に誕生した地球最古の植物であるといわれています。

食用としての歴史も古く、アステカ文明の時代にも使用されていたことが報告され、高栄養であり様々な健康効果が期待される研究報告がされている食品です。

スピルリナは多くの毒物学的研究によって安全性が証明され、米国食品医薬品薬局によっても一般に安全と認められる「GRAS」というカテゴリーに分類されている物質に属しています。

健康に有効的な栄養が豊富に含まれていることからスーパーフードとしてもっとも有名な食品のひとつであり、様々な形で栄養補助食品として使用されています。

そもそもスーパーフードとは?

健康志向の高まりにより、スーパーフードという言葉はしばしば耳にします。

所謂スーパーフードとは、主に植物由来の食品で、一般の食品よりも必須栄養素や健康成分を多く含むものを指します

このような条件を前提として、提唱者によって様々な食品が挙げられていますが、基本的に食歴が長くさらに安全性についても信頼がおけて評価の高いものがスーパーフードと呼ばれています。

その中でもこの記事で解説するスピルリナはスーパーフードの王様とも呼ばれるほど栄養価が高いことが知られています。

スピルリナに含まれる代表的な栄養素

スピルリナの栄養成分含有量は、培養時の季節・天候・日照時間等により若干変動しますが、良質なたんぱく質やビタミン、ミネラル、そして脂質や糖質、食物繊維と日常生活で必要な栄養素が豊富に含まれています。

アミノ酸

イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、 シスチン、チロシン、

フェニールアラニン、スレオニン、 トリプトファン、パリン、ヒスチジン、

アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン

ミネラル

カルシウム、鉄、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リン、銅、マンガン、

亜鉛、 コバルト、イオウ、クロム

ビタミン

β-カロテン(プロビタミンA)、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、

ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、葉酸

その他

食物繊維、多糖体、リノール酸、γ-リノレン酸、イノシトール、SOD、フィコシアニン、

ゼアキサンチン、 クロロフィルa、核酸など

たんぱく質が豊富

スピルリナには健康に効果的な栄養素が豊富に含まれていますが、中でもたんぱく質の含量は全体の約55%~70%と非常に高いことが分かっています。

数値で含有量を比較すると、良質なたんぱく質が豊富であるといわれる大豆製品の木綿豆腐で約7%、豚肉のヒレや鶏肉のむね肉でも約40%程度となるので、スピルリナのたんぱく質含有量がいかに多いかがわかります。

また、スピルリナに含まれているたんぱく質はアミノ酸バランスが良いことでも知られ、植物性ではありますが、犬猫が消化吸収しやすい動物性たんぱく質に近いタンパク質であるといわれています。

ビタミン・ミネラルが豊富に含まれる

スピルリナにはビタミンやミネラルも多く含まれています。

中でも特徴的なのが、野菜や果実、イモなどの植物性食品には含まれないビタミンB12が豊富に含まれていることです。

神経の正常な働きを保ち、造血作用を担うビタミンB12は魚や肉、卵といった動物性食品に多く含まれる栄養素ですが、スピルリナは植物でありながら動物性食品から摂れる栄養素も兼ね揃えています

他にも目の健康や強い抗酸化作用をもつβ-カロテンや、血液中のヘモグロビンの構成成分であり貧血予防に欠かせない鉄が豊富に含まれています。

必須脂肪酸の摂取ができる

スピルリナには脂質も含まれており、その中には人・犬・猫に共通する必須脂肪酸であるリノール酸やγ-リノレン酸も含まれています。

必須脂肪酸は体内で合成できない栄養素なので、リノール酸は食品から摂取する必要があります。

γ-リノレン酸は犬猫共にリノール酸から体内で合成できるとは考えられていますが、抗炎症作用や被毛健康維持には欠かせない栄養素であると考えられているので、適度に食品から摂取したい栄養素です。

消化吸収に優れた食品

スピルリナにはセルロース細胞壁がないので消化吸収されやすい事も大きな特徴のひとつです。

その吸収率は約95%ともいわれ、多くの栄養成分をスムーズ吸収することができます

スピルリナに対する注意点

「ミクロシスチン」や重金属類による汚染

スピルリナの収穫は主に湖などで浮遊培養式で行われており、水面にできた濃い藻の層を漉し取り乾燥させ作られています。

基本的に品質管理は厳しく行われており、重金属や細菌の混入がないようにチェックされることが一般的です。

もし、汚染された水域で栽培されたスピルリナであった場合、重金属や有害な物質を含む可能性があります。

重金属は主に鉛や水銀、ヒ素、カドミウムといった物質であり、体内に蓄積されることによる中毒症状を引き起こす懸念があります。

また問題視されているのは強い肝毒性をもつミクロシスチンです。

ミクロシスチンとは、シアノバクテリアによって生産される毒素(シアノトキシン)で、ミクロシスチンを含む水飲んだ人や家畜に中毒症状が出た報告や、肝臓がん促進作用、免疫細胞を活性化させ炎症を起こすなどの研究報告があります。

上記でお伝えしたように、有害な不純物の混入がないか確認が取られるのが一般的であり、全てのスピルリナが危険であるというわけでははりませんが、食品安全委員会(内閣府)からは下記の注意喚起がされています。

汚染リスクに関してはシアノトキシン、細菌、微量元素による汚染リスクがあることから、スピルリナを含むサプリメント摂取者に対し、行政当局に適切に管理されている経路(フランスの規制に準拠していること、流通経路がはっきりしていること、製造者が特定されていること)で供給されている製品を優先することを推奨する。

食品安全委員会(内閣府):フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、スピルリナを含むサプリメントに関して行政当局に適切に管理されている供給経路を経た製品を優先することを推奨

品質や衛生管理はメーカーの意識によるところが大きいので、スピルリナを購入する際には流通経路がはっきりしていることや、品質検査、管理をしっかりしているものを選ぶ事が大切であると考えます。

過剰摂取による健康リスク

様々な栄養素を豊富に含むスーパーフードであるスピルリナですが、過剰摂取が続けば健康リスクが考えられます。

スピルリナ豊富に含まれるミネラルは、過剰に摂りすぎれば他の栄養素と拮抗し、吸収量が下がってしまうことがある事に加え、犬や猫は過剰なミネラル摂取が長期に渡れば慢性腎臓病や尿石症などを引き起こす原因となる事もあります。

毎日主食として食べる総合栄養食のペットフードに含まれているものにプラスして、サプリメントなどでさらに摂取させることは過剰摂取となってしまう場合があります。

非常に栄養価も高く健康維持に有効であると考えられるスピルリナでも、少量の摂取がおすすめであり、体に良いからといって大量に摂取させるべきではないと考えます。

まとめ

スピルリナの歴史は古く、様々な栄養素が豊富に含まれたスーパーフードとしてサプリメントや飲料、そしてペットフードにも使用される食品です。

犬猫が摂取しても問題はなく、良質で豊富なたんぱく質やビタミン、ミネラルが摂取できるので健康的効果が期待されます。

ただし、栽培環境や検査の有無、品質管理の状況によっては健康被害の懸念がある細菌、または重金属類による汚染の可能性があるとの注意喚起がされている食品でもあります。

購入する際には企業による管理や検査の実施有無の確認、販売経路がはっきりしているものを選ぶ事など消費者による意識も必要でしょう。

過剰摂取による健康被害の懸念もありますので、体に良いものだからたくさん与えればいいという事ではないことを心に留めておきましょう。

参考:SPIRULINA – AN OVERVIEW

参考:臨床実践におけるスピルリナ:科学的根拠に基づくヒトへの応用

参考:スピルリナ(Spirulina maxima)の細胞壁多糖の化学的性質

参考:藍藻毒(Microcystin)の化学と毒性

スギさん@マッサンペットフーズ

株式会社ヒューマル マッサンペットフーズの公式WEBサイト「マッサンのペットフードの学校」の開設時から運営に参画しています。6年間の学びを生かしてペットレシピ.jpにも執筆しています。

関連記事