犬猫とビタミンAについて。皮膚被毛や視覚、粘膜の健康維持などに役立つ栄養

ビタミンは生命の維持や生育に必要な栄養素です。

この記事で解説するビタミンAは、動物の体内では合成されず、自然条件下では食物のみから摂取されるので、犬や猫の毎日の食餌で意識したい栄養素のひとつです。その働きや注意点を解説していきます。

ビタミンAとは

ビタミンは『脂溶性ビタミン』と『水溶性ビタミン』の2つに分類されます。この記事で解説するビタミンAは脂溶性ビタミンに分類されています。

水に溶けにくく油脂に溶けやすい脂溶性ビタミンのビタミンAは、脂質と共に小腸で吸収され肝臓に運ばれます。

肝臓に送り込まれたビタミンAは血液に乗って各組織に運び込まれ、必要に応じて送り出せるように貯蔵されます。

ビタミンAの働き

皮膚や被毛の健康維持

ビタミンAには皮膚のターンオーバーを促進させたり、肌を構成する様々な成分の生産を促す効果があるといわれています。

健康な皮膚を保つことは美しい被毛を保つことにも繋がりますので、犬や猫にとっても大切なビタミンです。

特に犬はフケや脂漏などの皮膚の疾患が現れる事が多々あります。病状にもよりますが、その際の治療の一部として活性型ビタミンAの投与が有効的であるケースがあるほど、ビタミンAと皮膚の健康維持は強いつながりがあります

視覚の暗順応性

ビタミンAは目の働き大きくかかわっています。

その中でも暗いところでも目が慣れて見えるようになる機能を正常に保つために必要なビタミンです。

目の網膜には光の明暗を感じるロドプシンという物質があり、そのロドプシンの主成分はビタミンAなのでその働きを正常に維持するためにはビタミンAが欠かせません。

鼻やのどの粘膜保護

ビタミンAは鼻やのど、他にも皮膚や目、胃腸や肺などを覆う粘膜を正常に保つ働きがあります

粘膜は病原菌などの侵入を防ぐ役割があるので、正常に働いている粘膜は全身の健康維持を支えているといえます。

ビタミンAが不足して粘膜が正常に保てなくなると、乾燥して硬くなったり傷つきやすくなります。鼻やのどの粘膜から病原菌が侵入し風邪をひきやすくなったり、皮膚がカサつく、目の潤いが不足するなどが起きてしまいます。

発育を促進

ビタミンAは胎児の発達にとって必須であると考えられています

ビタミンAは胎盤を経由して母体から胎児に供給されているので、胎児へのビタミンA移行蓄積量を付加する必要があります。

過剰摂取はいけませんが、妊娠中の犬や猫は意識して補給してあげると良いビタミンです。

犬猫はβ-カロテンをビタミンAに変換できる?

犬は人間と同様にβ‐カロテンの摂取をすると体内でビタミンAへ変換できます。

ただし、この変換は猫では行われないという研究報告があります

そのため、猫はβ‐カロテンからのビタミンAの合成は期待できないので、ビタミンAを含む食事を摂らなければならないと考えられています。

参考:猫はβ-カロテンを吸収しますが、ビタミンAには変換されません

犬や猫の一日当たりのビタミンA摂取量

単位成長期、妊娠期維持期上限値
犬4kgμg118.5118.55925
猫4kgμg118.55917998

AAFCOから計算すると避妊去勢済みの4kgの犬に必要なビタミンA摂取量は118.5μg、猫の場合が成長期&妊娠期が118.5μg、維持期が59μgとなります。

計算方法

1000kcal ME当たり成長期、妊娠期維持期上限値
UI1250125062500
μg37537518750
UI166783383325
μg50025024997

上記がAAFCOによる1000kcal当たりに必要なビタミンA量です。

去勢避妊済みの犬4kgに必要なカロリーは4×4×4×√2×√2×70×1.6=316(kcal)
去勢避妊済みの猫4kgに必要なカロリーは4×4×4×√2×√2×70×1.2=237(kcal)

となりますので、去勢避妊済みの犬4kgに必要なビタミンAは成長期・妊娠期と維持期共に395 UI、猫4kgが成長期・妊娠期で395UI、維持期で197 UIとなります。

ビタミンAの場合はUI×0.3=μgとなりますので、去勢避妊済みの犬4kgに必要なビタミンAは成長期・妊娠期と維持期共に118.5 μg、猫4kgが成長期・妊娠期で118.5 μg、維持期で59 μgとなります。

ビタミンAを多く含む食材

食品名成分量
100gあたり㎍
鶏レバー(生)14000 μg
豚レバー(生)13000 μg
うなぎ(生)2400 μg
銀鱈(生)1500 μg
まぐろ(焼)1100 μg
牛レバー(生)1100 μg
卵黄(生)690 μg

ビタミンAは食品から摂らなければいけない栄養素ですが、摂取上限がある栄養素なので、与えすぎには気をつけなければいけません

上記の表を確認すると、鶏、豚のレバーはどの食品よりも飛びぬけてビタミンA含有量が多いことがわかります。

これらが悪いというわけではありませんが、これらのようなビタミンAの含有量が多い食品を毎日のように継続的に与えてしまうと過剰症を引き起こしてしまいます。

一日の摂取量を参考に摂取過剰にならないように注意しましょう。

ビタミンA過剰症に要注意

犬や猫の主食となる総合栄養食のペットフードには必要量からそれ以上のビタミンAが含まれていることがほとんどです。

そのため、総合栄養食のペットフードをしっかり食べた上で、さらにビタミンAを多く含む食品を摂取してしまうと犬や猫が摂取すべきビタミンAの上限を越してしまうかもしれません。

特に猫は、肝臓に貯められる肉や魚といった動物性食品から摂取できるビタミンAに頼る事になるので、犬に比べて体にビタミンAを貯えやすい特徴をもっているので要注意です。

ビタミンAの過剰は筋肉の萎縮や痛みや、関節や脊椎の硬直なども起こり、骨の形成にも影響を及ぼししてしまう場合もあるので十分に注意が必要です。

ただし総合栄養食のペットフードをあまり食べたがらない時や、時々与えるおやつ、1日の食事のうち1食を手作りごはんに置き換えるなどの場合には過剰な心配はいりません。

個体差にあわせた摂取量を把握して、上手にビタミンAを含む食材と付き合えるといいでしょう。

ビタミンA不足による欠乏症もある

ビタミンAに関しては摂取不足による欠乏症も起こります。

総合栄養食のペットフードにはビタミンAがしっかりと含まれているので、起こりにくい病気になりましたが、ビタミンAの少ない偏った食事を続けていると欠乏症になる可能性があります

ビタミンA欠乏症になると、フケが多くなり皮膚がカサカサになるなどの皮膚トラブルや毛艶が悪くなるなどの症状が起こります。

他にも繁殖障害や網膜への影響、筋肉減弱などが起こりますので、偏食がある犬猫はビタミンAの摂取量に注意してあげましょう

まとめ

ビタミンAは自然条件下では食物からのみ摂取できるビタミンなので、日々の食事からしっかりと摂取したい栄養素です。

皮膚や被毛、粘膜、網膜などの健康維持に不可欠であり、妊娠中の犬猫であれば胎児の発育促進にも必要なので、総合栄養食のペットフードは必要量~それ以上のビタミンAが含まれているものがほとんどです。

ビタミンAは摂取上限がある栄養素なので与えすぎは禁物ですが、偏食であったり総合栄養食を食べられない犬猫にはビタミンAを含む食材を使った手作りごはんやサプリメントなどが有効的である場合もあります。

日々の食事管理、そして適正な摂取量を把握することで愛犬愛猫の健康管理ができますので、この記事を参考にしていただければ幸いです。

参考:脂溶性ビタミン(厚生労働省)

参考:イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科(書籍)

参考:栄養大全(NHK出版)(書籍)

スギさん@マッサンペットフーズ

株式会社ヒューマル マッサンペットフーズの公式WEBサイト「マッサンのペットフードの学校」の開設時から運営に参画しています。6年間の学びを生かしてペットレシピ.jpにも執筆しています。