世界中で人気のあるチューリップ。
花や葉もシンプルで美しいチューリップはこれまでに数えきれないほどの品種が生まれ、現在ではおよそ1000品種が世界中で栽培されています。
日本でも春を知らせる花として、ご家庭で楽しまれるのはもちろん、学校や公共施設の花壇など様々な場所で育てられ観賞されています。
この身近な植物であるチューリップは、犬猫にとって中毒症状を引き起こし、場合によっては死に至るほどの危険がある植物なので注意しなければいけません。
参考:チューリップの基本情報
チューリップはなぜ犬猫にとって危険な植物なのか
チューリップはユリ科の植物です。
ユリ科の植物は他にも様々ありますが、その多くが犬猫にとって有毒であると知られています。
主に球根に強い毒性があるといわれていますが、球根だけではなく花びらや葉、茎にも毒性成分が含まれる可能性が高いためチューリップの全草が危険とされています。
チューリピンやレクチンが原因?
チューリップを食べた動物が中毒症状を起こしたとの報告はたくさんありますが、チューリップの毒性についてはアルカロイドや配糖体とだけの記載が多く、現時点でその毒性について明確な研究報告はありません。
実際の死亡例の中に、牧草の生育が悪い年に干し草と一緒に大量のチューリップの球根を加えて牛の群れに与えたところ、6週間以内に50頭中14頭の牛が死亡したという報告があります。
検査したところ、牛の胃の内容物からチューリップの球根が検出され、その結果からチューリピン、ツリポシドAおよびB、レクチンなどによる嘔吐や下痢を伴う激しい粘膜刺激を起こす可能性が報告されました。
そのためチューリップの毒性の本体はチューリピン、レクチン、アルカロイドなどが考えられていますが可能性の報告であり明確にはされていません。
実際に犬猫のみならず他の動物の死亡報告まであるチューリップは、絶対に食べさせてはいけない植物であるといえるでしょう。
参考:チューリップの毒性
チューリップによるアレルギーの懸念
チューリップ(全草)にはアレルゲンが含まれていることが知られています。
そのアレルゲンは、チューリポサイドAという物質であるといわれており、アレルギー症状や皮膚炎を起こす可能性があります。
多くは問題が無いとされている物質ですが、感受性の高い個体やチューリップに頻繁に接触する個体は皮膚炎を引き起こす可能性が高くなります。
そのため、チューリップを口にしていなくても、花びらや葉などに体を寄せたりすることでアレルギーや皮膚炎の懸念が生まれるので、行動範囲内にチューリップを置くことは犬猫にとって好ましくないでしょう。
参考:チューリップ栽培作業にともなうアレルギー症状について
匂いを嗅ぐのもNG?花粉や花瓶の水にも注意
チューリップが死に至るほど危険な植物であるとわかったら、愛犬愛猫が匂いを嗅ぐ行動をとっただけでも心配に思うでしょう。
実際に、様々な危険を考えるとチューリップに近づくことは避けた方がいいと考えられますが、匂いを嗅ぐだけで中毒症状を引き起こす可能性は非常に低いです。
ただし花に顔をつけて匂いを嗅いだ場合はその限りではなく、顔に花粉がつくことや、花粉を吸引して体内に摂取するなどがあれば中毒症状を引き起こす可能性が少なからずあります。
またチューリップを挿した花瓶の水にも注意が必要です。
スズランほど明確に花瓶の水に毒性成分が溶け出すといった情報はありませんが、チューリップには全草において毒性成分が含まれているといわれているので、花瓶の中の水が絶対に安全という保障はありません。
チューリップには触れさせないこと、花瓶の中の水も飲まさない、舐めさせないように注意する必要はあるでしょう。
犬猫がチューリップを誤食してしまったら
チューリップを犬猫が誤食した場合、最も重要なのは状況に気づいた時点で速やかに動物病院へ連絡をする事です。
その際に、下記のような症状の有無や、摂取した部分、摂取量、経過時間などを記録しておくと診断の参考になる場合があります。
チューリップで起こる中毒症状例
- 嘔吐
- 下痢
- 沈うつ
- 過剰な流涎
大量摂取、球根の摂取の場合
- 腎不全
- 呼吸困難
- 手足のしびれ
- 循環不全
少量の摂取であっても嘔吐や下痢、元気がなくなってしまうなどの症状が現れます。
花びらや葉、茎などを大量に食べてしまったり球根をかじってしまった場合には、重篤な症状を引き起こし腎不全が起こるなど死亡率が高まります。
致死量については明確になっておらず犬や猫の個体差によるところが大きいので、誤食に気づいた時点で症状が無いからといって自己判断で経過観察をするのは大変危険です。
まとめ
チューリップは私たちの身近にある植物ですが、犬猫にとって死に至るほど有害な毒性成分が含まれているので、絶対に誤食がないように注意しなければいけません。
またチューリップにはアレルゲンが含まれ、アレルギー症状や接触による皮膚炎の懸念もあるので、誤食だけではなく接触しないように注意を払う必要があります。
犬や猫は好奇心が旺盛で、室内に飾っておいたものを誤食してしまうというのは容易に想像出来ます。
また庭や散歩コースなどに咲いている場合、顔に花粉がついたり、土を掘り返して球根をかじってしまうなどのケースも考えられます。
致死量は明確にわかっていませんが、チューリップによる動物の中毒症状発症・死亡報告は多くありますので十分に注意してください。
参考:ASPCA
参考:イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科