犬猫はレバーを食べても大丈夫
栄養価が高く、特に鉄分豊富で貧血予防に積極的に食べると良いとされているレバーは、犬猫が食べても大丈夫な食材です。
総合栄養食であるドライフードや缶詰、おやつなどにもレバーが使われているので愛犬愛猫に食べさせたことのある方も多いかと思います。
しかし私達と同様に犬猫がレバーを生で食べると食中毒などの危険性がありますので、この記事では犬猫にレバーを食べさせる際の注意点を解説していきたいと思います。
与える際の注意点
食中毒に注意!必ず加熱調理をしてから与えてください
加熱したレバーであれば大丈夫ですが、生のレバーには食中毒の原因となる細菌や寄生虫がいる可能性があります。
人間が食す場合にもその危険性が重視され、平成24年7月から食品衛生法に基づいて牛のレバーを生食用として販売、提供することが禁止されました。
これは、牛のレバーを安全に生で食べるための方法がなく、もし生で食べると腸管出血性大腸菌による重い食中毒の発生が避けられないからです。
牛のレバーだけではなく豚や鶏の生レバーも同様の危険性があり、E型肝炎や様々な食中毒のリスクがあるといわれています。
生レバーで主に危険視されている腸管出血性大腸菌は、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの危険な病気を起こし、最悪のケースでは死亡の原因にもなります。
参考:厚生労働省HP 牛レバーを生食するのは、やめましょう(「レバ刺し」等)
さらに、生レバーには菌だけではなく寄生虫がついている事もあります。
多数の寄生虫により、特に子犬や子猫、シニア犬やシニア猫の場合は下痢や嘔吐を起こしたり、栄養吸収が阻害されてしまう事も。
その一方でこうした寄生虫は見つかりにくいケースがあり、更に犬猫を介して人間に寄生虫が感染することがあるといわれています。
前述した菌などは75℃以上1分間の加熱でほとんどが死滅することが分かっていますので、犬猫に与える際にはしっかり中まで火を通すことが大切です。
与えすぎはNG
レバーは犬猫が喜んで食べる食材のひとつですが、喜ぶからといって与えすぎは禁物です。
レバーは栄養豊富な食材ですが、レバーの手作り食だけで必要な栄養をバランスよく摂るのは非常に困難です。
基本的には必要な栄養がバランスよく含まれた総合栄養食のドライフードをしっかり食べて、トッピングやおやつ程度に留めることをおすすめします。
また、比較的コレステロールも多く含まれていますので肥満気味な犬猫にレバーを頻繁に与えるのはNG。
現時点で健康診断でコレステロール値に問題がない犬猫でも食べ過ぎは肥満やコレステロール値に影響が出てしまう可能性もあります。
健康な犬猫にも与えすぎるのは止めましょう。
レバーの栄養
鉄
体内にある鉄の約7割は血液中にあり、赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビンの成分として、全身に酸素を送る役割をしています。
残りの鉄は肝臓や骨髄などに貯蔵され、不足すると血中に出て働きます。
牛、豚、鶏の中では豚レバーが最も多く鉄分を含むといわれています。
100g 当たりの鉄含有量
種類 | 含有量 |
---|---|
牛レバー | 4mg |
豚レバー | 13mg |
鶏レバー | 9mg |
ビタミンA
ビタミンAは目の健康に役立つビタミンで、白内障の予防や角膜の健康維持に期待できます。
また、皮膚や粘膜、被毛の健康状態を保つ働きにも期待できます。
ほかにも抗酸化作用をもったビタミンでもあるのでガンや老化予防にも期待できます。
牛、豚、鶏の中では鶏レバーが最も多くビタミンAを含むといわれています。
100g 当たりのビタミンA含有量
種類 | 含有量 |
---|---|
牛レバー | 1,100µg |
豚レバー | 1,300µg |
鶏レバー | 1,400µg |
パラアミノ安息香酸
通称PABA(バパ)と呼ばれ、ビタミンB群の一種である葉酸が体内で合成されるときに必要な物質です。
近年は乳酸菌の増殖因子として注目されています。同じくビタミンB群のパンテトン酸の吸収を高める働きもあり、不足するとビタミンB群全体の不足にも繋がります。
代謝アップ効果も期待されます。
ナイアシン
ビタミンB群の一種で、ニコチン酸ニコチン酸アミドを総称する水溶性ビタミンのひとつ。
洗ったり茹でたりすると溶け出すこともありますが、熱には強いので加熱調理に向いています。
酵素の働きを補助する栄養素として多くの代謝に関わり、エネルギー産生、糖質、脂質、タンパク質の代謝、DNAの修復や合成など様々な機能に関わっています。
皮膚や粘膜の健康維持をサポートし、血行促進、脳神経を正常に働かせる効果が期待できます。
牛、豚、鶏の違い
牛レバー
牛レバーは豚、鶏のレバーと比べてビタミンB12、ビタミンEが豊富に含まれています。
ビタミンB12
水に溶けやすい水溶性ビタミンで、悪性の貧血に有効なビタミンとして知られており、葉酸と協力して赤血球中のヘモグロビン生成を助けています。
また、脳から指令を伝える神経を正常に保つ役割もあり、認知症の人の脳にはビタミンB12が少ないことが報告されています。
野菜にはほぼ含まれず、貝類魚、肉など動物性食品に多く含まれます。
ビタミンE
ビタミンEは『若返りのビタミン』とも呼ばれ、強い抗酸化作用を持つ脂溶性のビタミンです。
体内の脂質の酸化を防ぎ、動脈硬化や血栓の予防、血圧の低下、悪玉コレステロールの減少などの働きがあります。
豚レバー
牛、鶏レバーに比べてたんぱく質の含有量が最も高いといわれています。
動物性たんぱく質
たんぱく質は体の材料となる重要な栄養素です。犬猫はもともと肉食動物なので、この動物性たんぱく質は体を作るとても大切な栄養素です。
三大栄養素【たんぱく質、脂質、糖質】のひとつで、血液や筋肉、内臓、皮膚などの体の土台となる主要な成分です。
生命の維持に欠かせない酵素や、消化器官、脳神経の機能を調整するホルモン、免疫抗体を作るなど重要な働きをしています。
体内で合成できない必須アミノ酸を多く、バランスよく含む良質たんぱく質であるため食事から補給する必要があります。
鶏レバー
牛、豚レバーに比べてビタミンB1、葉酸が豊富で低カロリー。
3種の中で最も癖や臭みが少ないのも特徴のひとつです。
ビタミンB1
ビタミンB1は糖質をエネルギーに換えたり、疲労物質を作りにくくする働きがあります。脳と神経を正常に保つ働きもしています。
葉酸
葉酸はビタミンB群の一種で「造血のビタミン」とも呼ばれています。赤血球の細胞の形成を助ける役割があり、貧血予防にも効果があるといわれています。
レバーを与えるメリット
豊富に含まれるたんぱく質は体をつくる大事な栄養素
レバーに含まれるたんぱく質は犬猫の体を維持するエネルギー源となり、筋肉、骨、被毛、爪と様々な部位に関わる重要な栄養素です。
たんぱく質を作る約20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できないため、必ず食事から摂取しなければいけないアミノ酸があります。
これを『必須アミノ酸』と呼び、レバーにはこの必須アミノ酸が含まれています。
成長期から筋肉が衰えがちなシニア犬猫まで健康な体を維持するのに役立つほか、被毛の健康維持にも欠かせない栄養素です。
豊富な鉄分で貧血予防と疲労回復
レバーの代表的な栄養素としてあげられる鉄。
肉に比べてレバーはこの鉄の含有量がとても多く、貧血予防や体の隅々まで酸素を運ぶ働きで疲労回復する効果が期待されます。
レバーに含まれる鉄は動物性のヘム鉄と呼ばれ、植物性の非ヘム鉄より体に吸収されやすいといわれています。
鉄欠乏性貧血など、動物病院で鉄を含むお薬を処方されている場合は与えるのを控え、与えたい場合には獣医師に相談しましょう。
ビタミンB群の働きとそれをサポートするパラアミノ安息香酸
レバーにはビタミンB群が豊富に含まれており、皮膚や粘膜の健康や神経を正常に保つ働きのほか、悪性の貧血に有効な働きをする効果が期待されています。
様々なビタミンB群をバランスよく含むレバーは優秀なビタミンB源食材です。
通称PABA(バパ)と呼ばれるパラアミノ安息香酸は、ビタミンB群の一種である葉酸が体内で合成されるときに必要な物質。
同じくビタミンB群のパンテトン酸の吸収を高める働きもあり、不足するとビタミンB群全体の不足にも繋がるといわれています。
レバーにはこのPABAが含まれているので、効率よくビタミンB群を吸収してくれることが期待できます。
レバーの調理方法
レバーは下処理が大変というイメージがあるかもしれませんが、やり方さえわかれば意外と簡単に出来ます。
また、前述の通りレバーの生食は非常に危険性が高いです。
体に悪影響を及ぼす菌などは75℃以上1分間の加熱でほとんどが死滅することが分かっていますので必ず加熱調理をしてから与えましょう。
【レバーの下処理と調理】
下処理方法
鶏レバー
①レバーを広げると真ん中あたりに白い筋や黒い血の塊がついていますので、これを包丁で取り除き一口大に切ります。
②ボウルに切ったレバーと水を入れ、ぐるぐると手で10~20回かき混ぜたら濁った水を捨て流水で洗い流します。
③これを3回程度繰り返したらザルにあげて、水気を切れば下処理完了。
※レバーとハツがくっついた状態で売られている場合もあります。真ん中にロケットのような形のものがついていればそれはハツです。
切り離し、白い脂肪部分を取り除いて半分に切れば中にある黒い血の塊が取りやすくなります。
包丁の刃先などで血の塊は取り除いてしまいましょう。ハツもレバーと同様に犬猫が食べられる食材なので一緒に調理しても大丈夫です◎
豚レバー、牛レバー
①レバーを一口大に切ります。
②ボウルに切ったレバーと水を入れ、汚れや黒い血の塊を取り除きます。
③濁った水を捨て流水で洗い流し、これを3回程度繰り返したらザルにあげて、水気を切ります。
④容器に水気を切ったレバーを入れ牛乳をレバーが浸る程度そそぎ、冷蔵庫で1時間程度漬けます。
⑤ザルにあげて牛乳を流し、水気を拭き取れば下処理完了です。
調理方法
茹でる方法と焼く方法の2つの加熱調理を解説します
レバーを茹でる
①鍋でお湯を沸かしレバーを入れ、中火で再沸騰させたら弱火ににし5分ほど茹でます。
②5分経ったら蓋をして火を消し10分ほど置いたら完成です。
強火でグラグラと茹でると火の通りが早くてもパサパサになったり硬い仕上がりになることも。
弱火でゆっくり茹でてお湯の中でしばらく置くことでしっとりとした食感に仕上がります。
レバーを焼く
①中火で熱したフライパンにレバーを入れます。
②全体が白っぽくが変わってきたらひっくり返して反対側も焼きます。レバーから水分が出てきて、自然と蒸し焼き状態になり、中までしっかりと加熱ができます。
③箸でレバーを上から押して、しっかりとした弾力を感じれば中まで火が通ったサインです。火を消して完成です。
※テフロン加工のフライパンであれば油をひかなくてもくっつかないので犬猫へ与える際に余計な油分を控えられます。
まとめ
犬猫はレバーを食べても大丈夫!
栄養価が高く、特に鉄分豊富で貧血予防に積極的に食べると良いとされているレバーは、犬猫が食べても大丈夫な食材です。
しかし私達と同様に犬猫がレバーを生で食べると食中毒などの危険性がありますので決して生で与えないようにしましょう。
しっかり加熱処理すれば犬猫にとって嬉しい栄養がいっぱいなので、この記事で紹介した下処理や調理法を参考に、ぜひ愛犬愛猫の食事にも取り入れてみてください。