愛犬・愛猫に与えるタコについて
イタリア料理のカルパッチョ、スペイン料理のタコのガリシア風など日本だけでなく世界中でポピュラーな食材のタコ。
関西地方では生後100日祝いのお食い初めの際にタコを使用するなど古くから愛されてきた食材です。
食用として収穫されているタコの種類は数種類いますが、それぞれ旬が様々です。
例えば、日本で最も食用としてポピュラーなマダコの旬は6月から7月下旬。マダコより身が柔らかくお刺身で人気のあるミズダコの旬は12月〜1月など。
一年を通して手に入りやすいタコですが犬猫は食べても大丈夫なのでしょうか。
犬や猫はタコを食べても大丈夫?
実はタコを食べても大丈夫かどうかは犬か猫かによって違います。
犬と猫、共通の注意点もあれば犬か猫かによって違う部分もあるので以下で解説していきます。
生食は絶対にNG
人間の場合はタコ刺しなどで生のタコを食べる機会があると思います。ですが、犬の場合も猫の場合も生のタコを食べさせるのは絶対にやめてください。
チアミナーゼがビタミンB1を分解する
生のタコにはチアミナーゼという酵素が含まれています。チアミナーゼはチアミン(ビタミンB1)を分解する作用があります。ビタミンB1は食事からしか摂取できず、犬猫にとってとても大事な栄養です。
ビタミンB1の働き
ビタミンB1は犬猫が摂取した炭水化物が分解されてできるブドウ糖をエネルギーに変えるというとても重要な働きをします。
ブドウ糖は脳が利用出来る唯一の栄養素といわれています。そのためブドウ糖をエネルギーに変えるということは体を動かすためだけでなく脳を動かすためにも大切な働きなのです。
チアミン欠乏症(ビタミンB1欠乏症)
通常、総合栄養食のペットフードを食べている場合はビタミンB1が欠乏することはありませんが、チアミナーゼによってビタミンB1が分解されるなどしてビタミンB1が著しく欠乏すると「チアミン欠乏症(ビタミンB1欠乏症)」という病気になってしまいます。
猫がビタミンを体に蓄えるのが苦手なことや猫は犬よりも約5倍のビタミンB1が必要であるといったことからチアミン欠乏症は犬よりも猫に多い病気です。
症状としては人間でいう「脚気(かっけ)」と同じようなものが現れます。典型的な症状は「歩行障害」や「首が下がり常に下を向いた状態で低い姿勢で歩く」などがあります。
他にも不整脈・食欲不振・嘔吐・視力障害などがあります。
脚気は江戸時代~明治時代にかけて大流行し、かつては国民病と呼ばれていました。
昔の病気と思われがちなのですが今でも偏った食事などが原因で脚気になる方がいるようなので飼い主様もビタミンB1の欠乏にはお気を付けください。
チアミナーゼは加熱することで活性を失います。また、チアミナーゼの人間への影響は少ないようです。
加熱したら食べさせてもいい?
チアミナーゼは加熱することで活性を失うのでゆでだこなどではチアミン欠乏症のリスクは大幅に減ります。
では加熱処理したタコは犬猫に食べさせても大丈夫なのでしょうか。
猫には食べさせない方がいい
加熱したタコに毒性はありませんが、加熱したとしても猫にタコは与えない方がいいです。
理由は二つあります。
①のどに詰まらせるかも
皆様ご存じのとおりタコは歯ごたえがよく、よく噛んで食べる食材です。
しかし猫は人間のように食べ物をよく噛んで飲み込むという習慣がなくほぼ丸呑みしてしまいます。
そのためたこ焼きの中に入っている程度の大きさのタコであっても猫が食べるとのどに詰まらせて一大事になりかねません。
②消化に悪い
では細かく刻んで与えると大丈夫でしょうか?
そもそもタコは猫にとって消化に悪い食材です。消化不良による下痢・嘔吐の危険性があります。
犬は加熱したものなら大丈夫
犬は加熱したタコなら食べても大丈夫ですが無理に与える必要はありません。
①のどに詰まらせるリスクは犬にもある
猫と同じように犬にもタコをのどに詰まらせるリスクはあります。特に小型犬などの体の小さいわんちゃんは注意しましょう。
中型犬や大型犬の場合も人間が食べるたこぶつなどの大きさは避け、細かく刻んであげた方がいいでしょう。
②猫よりも消化は得意だが消化不良の危険もある
犬は猫よりはタコの消化が得意です。とはいえ多量のタコを与えると消化しきれない可能性はあるので注意しましょう。
犬 | 猫 | |
---|---|---|
生食 | NG | NG |
加熱したもの | △ | NG |
加熱して 細かくしたもの | ○ | △ |
タコに含まれる代表的な栄養素
まだこ ゆで 可食部100g当たり
栄養素 | 含有量 |
---|---|
エネルギー | 91kcal |
たんぱく質 | 15.4g |
脂質 | 0.2g |
炭水化物 | 6.9g |
亜鉛 | 1.8mg |
ビタミンE | 1.9μg |
参考資料:八訂 食品成分表 2022
たんぱく質
たんぱく質は皮膚・内臓・骨・被毛など犬猫の体をつくるうえで欠かせない栄養素です。
タコは高たんぱく・低糖質・低脂質が魅力の食材ですが、総合栄養食のペットフードを与えていると不足することはありませんので無理にタコでたんぱく質を摂取する必要はありません。
タウリン
タウリンはアミノ酸の一種で、心臓機能の改善・抗酸化作用による老化予防・視力や聴力を正常に保つ・皮膚のバリア機能など様々な健康効果があるといわれています。
タウリンは犬や人間は体内で生成することができますが猫はできません。
また、犬は体内でタウリンの生成をすることができるとはいえ人間と比較するとその力は弱いです。
亜鉛
亜鉛は炭水化物やたんぱく質の代謝に関わっている重要なミネラルです。
炭水化物やたんぱく質を代謝することによって細胞の再生や皮膚や被毛の健康維持に役立ってくれます。
過剰摂取は「亜鉛中毒」の危険性がありますが、亜鉛は毒性が低いのでサプリメントの大量誤飲などない限り心配ありません。
ビタミンE
ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種で、活性酸素から細胞膜を保護する抗酸化作用があり、老化の予防が期待できます。
犬に加熱したタコをあげる際の注意点
加熱したタコは犬食べても大丈夫な食材ですが、与える際にはいくつかの注意点があります。
味付けはNG
タコを人間が食べる時のような味付けをして与えるのはやめましょう。
人間用の味付けは犬猫にとって塩分過多・糖分過多・脂質過多の原因になります。
アレルギーに注意
犬はタコにアレルギーを持っている場合があります。初めて与える場合はごく少量にして様子を見ましょう。
皮膚や口周りの赤みやかゆみ・腫れ等が見られた場合すぐに与えるのを辞め、症状がひどくなる場合は動物病院へ行きましょう。
メリットよりリスクの方が大きい
犬猫がタコを食べることによって得られるメリットよりもリスクの方が大きいです。
そのリスクがより大きいのが犬よりも猫なので本記事では「猫には食べさせない方がいい」としています。
最終に決めるのは飼い主様なので、もし与える場合は愛犬や愛猫の体調と相談しましょう。
犬にあげる場合のタコの調理法
犬にタコを与える際に最もリスクが少ないのはゆでだこを原形がなくなるぐらいまで細かく刻むことだと思います。
最初は普段与えているフードに少しだけ混ぜて与えてあげましょう。
愛犬の様子を見つつ大丈夫そうでしたら少し量を増やしてあげるといいでしょう。
【まとめ】
犬は加熱したタコを食べても大丈夫ですが、猫には与えないようにしましょう。
犬の場合も以下の点には注意しましょう。
- チアミン欠乏症のリスクがあるので生では与えない
- 消化に悪いものであることを理解しておく
- メリットとリスクのバランスから無理をして与える必要はない
今回はタコについて紹介しました。タコは「食べられないことはないが食べさせる必要はない」食材です。
それを理解した上で愛犬・愛猫に与える際は十分に注意しましょう。