犬猫に塩を与えてはいけない?犬猫は汗をかかないって本当?ナトリウムの働きとは

料理の「さ・し・す・せ・そ」の「し」として日本で古くから使用されてきた調味料の塩。

シンプルながら料理の下味・食材から余分な水分を出す・食材の保存性を良くするなど様々な用途があり、私たちが料理をする上で無くてはならない調味料の1つです。

一般的に犬猫に塩などの人間用の調味料を与えるのは良くないとされている場合が多いですが、実際にはどうなのか詳しく解説していきたいと思います。

ペットフードにも塩分は含まれている

実は犬猫にも塩分(ナトリウム)は必要で、多くのペットフードにも必要量含まれています。

ナトリウムは体内で重要な働きを担っているため摂取量をゼロにしてはいけません。

今回はナトリウムの働きや犬猫への必要量についてご紹介します。

犬と猫の必要量の違い

AAFCO(アメリカ飼料検査官協会)の定める総合栄養食の基準を満たすためにはナトリウムが以下の量含まれていなくてはいけません。

幼犬基準0.3%以上
成犬基準0.08%以上
幼猫基準0.2%以上
成猫基準0.2%以上

成犬と成猫を比べたときにかなりの差がありますが、これは犬猫の食事が関係しています。

犬は肉食寄りの雑食動物であるのに対して猫は完全肉食動物です。

動物の肉には塩分が多く含まれるため野生のころの名残で猫はナトリウムの必要量が犬よりも多くなっています

ちなみに草食動物は植物を主食としていますが植物にはナトリウムがほとんど含まれていないため家畜などには大きな岩塩を舐めさせるなどしてナトリウムを補うようです。

野生のヤギが絶壁に上るのはナトリウムが含まれている岩や土を舐めるためです。

ナトリウムの働き

塩の主成分であるナトリウムは犬猫をはじめとする多くの生き物に必要な栄養素です。

そんなナトリウムは体内で以下のような働きをします。

  • 同じミネラルであるカリウムと共に体内の水分バランスを調整している
  • 血液などの酸性とアルカリ性のバランスを調整している
  • エネルギー代謝や神経伝達に関与

これらの他にもナトリウムを摂取することによって水分の摂取量も同時に増え、尿の量が増えます。

尿の量が増えると尿が希釈されるため、尿路結石のリスクを減らすことができると言われています。

過剰摂取のリスク

ナトリウムは犬猫にとって重要な栄養素ですが過剰に摂取すると危です。

犬猫が一度にたくさんナトリウムを摂取すると胃腸に負担がかかり嘔吐の可能性があります。

またたくさん摂取するとその分摂取する水分量も増え、血液の量が増加し心臓へ負担がかかってしまいます。

犬猫への塩の与え方NG例

直接塩を舐めさせる

犬猫の塩分必要量はとても少ないため塩を直接舐めるとたとえひと舐めでも1日の許容量を超えてしまう可能性があります。

犬猫が食べてはいけないものを食べてしまったときに塩を舐めさせて吐き戻しを促す方法があるようです。

これは塩分過剰になってしまい、犬猫の体の負担にもなるのでやめましょう。

犬猫が食べてはいけないものを食べたときはすぐに獣医師に相談するのが一番です。

総合栄養食に上乗せして与える

犬猫のために作られた総合栄養食のペットフードにはナトリウムをはじめとした栄養素が必要分含まれています。

そのため基本的には総合栄養食のペットフードを与えていると必要な栄養素は補えているのでそれにプラスしてナトリウムを与えると過剰になってしまう可能性があります。

人間用に味付けされたものを与える

市販されているもので塩を使用して人間用に味付けされたものや犬猫の手作りご飯を作る際に人間用のものと同じように味付けするのはやめましょう。

基本的に人間が美味しいと感じる塩分量は犬猫にとっては多すぎる場合が多いです。

毎食手作りご飯を与えている場合はナトリウム量の調整が必要です。

しかし、普段与えているペットフードの代わりにたまに手作りご飯で一食置き換えする程度であれば調味量は使用しなくても良いと言えます。

犬猫は汗をかかない?

犬猫は汗をかかないので塩が必要ないという考え方がありますがこれは間違っていて、犬猫も汗をかきます。

ただ汗腺が鼻と肉球にしかないため人間のように全身から汗をかくことはありません。

全身から汗をかく人間でも汗から排出されるナトリウムは全体の1%ほどだと言われており不要なナトリウムの大部分は犬猫と同じように尿として排出されます。

そのため犬猫に塩が必要ないというのは汗をかかないからではなく単純に必要量が少なく、ペットフードで十分補えるためと言えるでしょう。

【まとめ】犬猫に塩を与える場合は量に注意

犬猫には塩を絶対に与えてはいけないと言うわけではありません。

しかし与え方や量には注意が必要なのでポイントをおさらいしましょう。

  • 塩の主成分であるナトリウムは犬猫にとっても重要な栄養素
  • 過剰摂取は心臓や腎臓に負担をかけてしまう
  • 心臓や腎臓の機能が衰えている犬猫は獣医師へ相談し与えるフードを考える

今回は犬や猫にとっての塩についてご紹介しました。

人間の理想の塩分量は6~7gと言われているのに対し、猫は2~3g、犬は体重5kgの成犬で1gほどと言われています。

ペットフードやおやつに含まれているため、すでに必要量を摂取している可能性が高いです。

必要量が少ないということを十分に理解した上で手作りご飯やおやつを与えてあげましょう。

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鈴木 利奈RINA SUZUKI - PET FOOD ADVISER

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ペットレシピ.jpの記事を執筆・監修しています。

キャットフード勉強会・ドッグフード勉強会を運営している鈴木です。大好きな犬猫とペットフードについて深く学ぶため、講師を呼んで勉強会を開いています。ペットフード販売士、ペット栄養管理士、愛玩動物飼養管理士2級、化粧品検定1級(コスメコンシェルジュ)等の資格を取得。

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