犬猫はぜんまいを食べても大丈夫?生食は危険!ワラビやオニゼンマイとの誤食に注意

ぜんまいについて

ぜんまいは全国各地で採れる山菜で、山や野原の渓流近くや水路のわきなどの湿地に自生しています。

先端が渦巻き状の芽がひとつあるのが特徴で、若芽が食用になり、山菜そばや山菜おこわなど山菜料理には欠かせない存在です。

ぜんまいにはビタミンや鉄分、食物繊維が豊富で、乾燥させたものは更に栄養分がアップするといわれています。

ぜんまいの生食は危険

犬猫にとって危険なチアミナーゼ

ぜんまいは生の状態だとチアミナーゼという酵素が含まれています。

チアミナーゼが多く含まれる食材は魚介類や甲殻類が有名ですが、ワラビやぜんまいなどのシダ類にも豊富に含まれ、犬猫の健康維持に必要なビタミンB1を壊しビタミンB1欠乏症を引き起こしてしまう可能性があります。

ビタミンB1欠乏症は神経症状、運動機能障害、ふらつきによる歩行困難などの症状が現れます。

犬と比べて猫に多く見られますが、犬もチアミナーゼを過剰に摂取すればビタミンB1欠乏症を引き起こします。

決して犬猫に生のぜんまいを食べさせることがないように注意しましょう

参考:禁忌食(その4)―魚介類(チアミナーゼ)

生のぜんまいはアクが強い

ぜんまいはアクが強い山菜で、採取してから時間が経つほどアクが強くなるとも言われています。

アクとは食材に含まれるえぐ味や苦み、渋味などを総称して指し、アクの成分にはシュウ酸、アルカロイド、タンニン、ポリフェノールなど様々なものが含まれるといわれています。

この中のシュウ酸はぜんまいにも含まれ、犬猫の尿路結石を引き起こす原因になる成分なので、その点からも下処理をしていないぜんまいを生のまま犬猫に食べさせるのは望ましくないと考えられます。

加熱処理したぜんまいは犬猫が食べても大丈夫

前述したように、下処理を行っていない生のぜんまいには豊富なチアミナーゼやシュウ酸が含まれていることから、犬猫が食べるべきではないという解説をしました。

しかし、チアミナーゼは熱処理によって失活することが分かっており、またシュウ酸は水溶性なのでアク抜きの下処理でその含有量を減らせます

そのため、茹でたり水に長時間浸けてアク抜き処理を行ったぜんまいは犬猫が食べても大丈夫といえます。

ぜんまいに含まれる栄養素

カロテン

緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種のカロテンがぜんまいにも含まれています。

カロテンは活性酸素の発生を除去したり抑えたりする作用がある抗酸化作用が期待されています。

猫では行われませんが、犬は体内でビタミンAへの変換が行われ、目の健康維持や皮膚、粘膜の健康維持にも役立つといわれています。

ビタミンB2

ぜんまいに多く含まれるビタミンB2は脂質を分解してエネルギーを作る働きがあります。

そのため、肥満防止に役立つビタミンとして期待されています。

また、皮膚や被毛の健康維持、免疫力の向上の働きも期待されています。

ビタミンC

ぜんまいには24㎎/100gあたり含まれており、これは山菜の中でトップクラスの含有量です。

強い抗酸化作用が期待できるビタミンⅭは、免疫力アップやコラーゲンの生成のサポート、メラニン色素の過剰生成を抑制するなどの肌環境を整えてくれる効果もあります。

ほかにも鉄分の吸収促進、解毒やホルモン代謝を担う酵素のサポートの効果でアンチエイジングに期待ができます。

鉄分

ぜんまいにはビタミンCが豊富に含まれているので、鉄分を効率よく吸収できる食材といえます。

植物に含まれる鉄分は非ヘム鉄と呼ばれ、この非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂る事で体内への吸収が促進されます。

鉄は赤血球中のヘモグロビンに結合し、全身に酸素の供給を行います。

また、体内の老化を促進したり正常細胞を傷つける過剰な活性酸素を分解する働きを持ちます。

不溶性食物繊維

ぜんまいには不溶性食物繊維が多く含まれています。

不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収してふくらみ、ぜんどう運動を促進してくれるので便秘解消に役立ちます。

また、腸内細菌のエサとなって腸内環境を改善、食後の血糖上昇をゆるやかにして糖尿病を予防する効果なども期待されています。

乾燥ぜんまい、塩漬けぜんまいについて

ぜんまいは旬の時期に山菜取りで採って食べる生のも以外にも、乾燥や塩漬けと長期保存ができるように加工されたものがあります。

乾燥ぜんまい(干しぜんまい)

茹でたぜんまいを天日干しなどで乾燥させたもの。茹でて乾燥させる事で茶色~黒っぽい色になります。

塩漬けぜんまい

収穫したぜんまいに多量の塩をまぶし、漬物のように重しをのせて数日間保存して作られるのが一般的です。

乾燥ぜんまい(干しぜんまい)は、戻すと約5倍ほどに増えるので、決して水やお湯などで戻す前のそのままの状態で犬猫に絶対に食べさせないように注意してください

最悪の場合、腸閉塞などを引き起こす可能性が考えられます。

また塩漬けぜんまいは塩抜きしても多少の塩分がぜんまいに残る可能性を考えると、犬猫に与えるのに向いていない加工品でしょう。

犬猫に与えたいと考える場合には、生のぜんまいを加熱を伴う下処理をしたものか、しっかりと戻した乾燥ぜんまい(干しぜんまい)を細かく刻んだものを用意するといいでしょう。

ぜんまいを犬猫に与える際の注意点

過剰摂取はさせない

加熱を伴うアク抜きを行ったぜんまいであれば食べても大丈夫と解説しましたが、無制限に食べても大丈夫というわけではありません

ぜんまいは不溶性の食物繊維が豊富に含まれています。

刻んだものを少量であれば不溶性食物繊維による健康効果を得られることやが考えられますが、日常的や一度に多量のぜんまいを与えてしまうと、食物繊維の過剰摂取から下痢や嘔吐の調不良の原因となってしまう事もあります

ぜんまいは細かく刻んだものを時々トッピングや手作りごはんの食材の一部として少量加える程度に留めるといいでしょう。

ぜんまいに似た植物に注意

市販されているぜんまいは食用のぜんまいなので問題はないのですが、山で自生しているものを収穫して犬猫に食べさせたいと考えている場合には、ぜんまいに似た毒をもつ植物があるので十分に注意が必要です。

ワラビ

食べられる山菜として有名なワラビですが、ワラビには「プタキロシド」という天然の毒成分が含まれています。

この「プタキロシド」による牛の中毒症状が確認されており、「ワラビ中毒」とも呼ばれています。

ワラビ中毒は骨髄機能が障害されて血液凝固不全が起こり、血尿・血便・出血などの症状が現れます。

これは犬猫にとっても大変危険な成分であると考えられるので、ワラビを犬猫に与えないように注意しましょう。

オニゼンマイ

オニゼンマイはぜんまいに非常に見た目が似ています。

食用のぜんまいと違って綿毛が茶色く葉が大きいことが特徴です。

毒性があるわけではありませんが、硬く食感が悪い事やエグみが非常に強くアクが強いので不味い事で知られています。

消化の悪さやアクとして犬猫にとって控えたいシュウ酸などの成分が含まれるので、こちらも食用ぜんまいと間違えないように注意しましょう。

まとめ

ぜんまいは日本で長く親しまれる山菜の一種です。

生のぜんまいは犬猫がビタミンB1欠乏症を引き起こすチアミナーゼが含まれているので食べさせてはいけない食材です。

シュウ酸も多く含まれ尿路結石の原因となる可能性も考えられるため、購入した生のぜんまいはもちろん、自生しているぜんまいを犬や猫が口にしてしまわないように注意が必要です。

犬猫にとって危険なチアミナーゼは熱で失活し、シュウ酸はアク抜き処理で減少するため、加熱を伴うアク抜きの下処理を行ったぜんまいは犬猫が食べても大丈夫でしょう。

ただしぜんまいを日常的や一度に多量摂取してしまうと消化不良を引き起こす可能性があるため、下処理し、細かく刻んだものを稀に少量与える程度に控えるといいでしょう。

山菜取りなどで自身で収穫される場合には、ぜんまいに似たオニゼンマイや毒性をもつワラビを間違えて与えないように十分に注意しましょう。

参考:食材大全(NHK出版)

スギさん@マッサンペットフーズ

株式会社ヒューマル マッサンペットフーズの公式WEBサイト「マッサンのペットフードの学校」の開設時から運営に参画しています。6年間の学びを生かしてペットレシピ.jpにも執筆しています。

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