犬猫は雑炊を食べても大丈夫?
雑炊は古くからある日本料理で、様々な食材とともにご飯を煮た料理の事をいいます。鍋料理の〆にも雑炊は定番となっています。
昔は人の食事の残り物にご飯を混ぜて犬猫に食べさせる習慣がありましたが、現在では人用の食事の味の濃さや、犬猫が中毒症状を引き起こす食材の使用の危険性を考えてその習慣は無くなりつつあります。
お鍋を囲んで〆に雑炊を作っていたら、魚や肉の香りにつられて食べさせて!と欲しがる犬猫もいるかとは思いますが、上記のような問題から基本的に人間用に作られた雑炊を犬猫に食べさせる事はNGです。
犬猫に雑炊を食べさせたい場合は人用をそのまま与えるのではなく、犬猫用に作ってあげると良いでしょう。
犬猫が注意すべき食材
雑炊には様々な食材が使われます。
その中には人間が食べるのは大丈夫でも、犬猫にとっては命の危険がある食べてはいけない食材が紛れている場合もあります。
雑炊に使われる可能性があるものの中から、いくつか解説します。
ネギ類(長ネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、アサツキ等)
最も注意すべきもののひとつとして、雑炊に使われる可能性が高いネギ類があげられます。
ネギ類は生の物だけではなく、中毒成分はネギを煮た煮汁に溶け込み、一緒に煮た他の食材にも中毒成分が付着していると考えられています。
ネギ類だけ避ければ大丈夫という事ではありません。
犬猫が食べれば貧血、下痢や嘔吐、呼吸困難や重篤な場合には命を落としてしまう事も。
ネギ類をキッチンで調理する際にも、犬猫の届く場所に放置したり、調理した手を洗わずに犬猫の体に触ることもNGです。
イカやタコ、甲殻類、貝類
イカやタコ、甲殻類、貝類は出汁が良く出るので雑炊に使われることが多々あります。
火をきちんと通し、細かく刻んだものを犬が少量食べるのであれば大丈夫なものもありますが、大きくカットしたものは消化不良の原因となり、食べても大丈夫な食材とは言い難い面があります。
貝類の中には季節によって毒素を含み、犬でも食べてはいけない種類(アワビ、サザエ、ツブ貝、トリ貝等)もあります。
また猫にとってこれらの食材は刻んだとしても簡単に消化できるものではなく、喉に詰まらせたり、下痢や嘔吐などの消化不良を起こしてしまう事や、貝の毒素により強い中毒症状を引き起こすこともあります。
更にしっかり火が通っていない生のイカやタコ、甲殻類、貝類に含まれるアミナーゼによって犬猫の体内でビタミンB1を破壊され『ビタミンB1欠乏症』を引き起こす危険性があります。
上記のような理由から、火を通したとしても猫には与えるべきではないと考え、犬に関してもきちんと火を通したものを細かくすること、また食べても大丈夫な種類かきちんと確認する必要があります。
香辛料(唐辛子、ワサビ等)
唐辛子やワサビ等の香辛料を雑炊の薬味として使う人も多くいますが、犬猫にとっては刺激が強すぎます。
犬猫が食べた際には粘膜を傷つけたり、消化器官へのダメージを与え、下痢や嘔吐、食欲不振などを起こしてしまうので、食べても大丈夫とは言えません。
唐辛子、七味、ワサビ等刺激の強い香辛料を使用する際には、テーブルの上に放置したり、犬猫が食べる雑炊に混ざらないように注意しましょう。
生卵
卵自体は犬猫が食べても大丈夫な食材ですが、生卵の白身に含まれる『アビジン』はビオチンと結合して、ビオチンの吸収を阻害してしまいます。
また、病原菌の代表ともいえる大腸菌やサルモネラ菌の存在も危険と考えられるため、安易に犬猫が生卵を食べても大丈夫とは言えません。
ただし、アビジンは加熱により失活し、大腸菌やサルモネラ菌に至っても加熱する事で死滅することがわかっています。
雑炊に生卵を溶いて加える際には、しっかりと加熱さえすれば危険な食材ではなくなります。
どんな雑炊なら犬猫が食べても大丈夫なの?
上記の解説通り、基本的に人間用に作った雑炊はNGです。
ただし、中毒症状を引き起こさない食材をきちんと選び、犬猫にとって濃すぎる調味をしなければ、犬猫が雑炊食べても大丈夫と言えます。
上記で解説した以外でも、犬猫が中毒症状を引き起こす可能性のある食材は多くあるので注意は必要ですが、たんぱく質には魚か肉、また野菜はネギ類を避けることである程度の危険は回避できます。
さらに、人間より消化能力が低い犬猫へ食べさせる際には、具材を細かく刻んであげる事も大切です。
人用の雑炊をシェアしたいのであれば、水炊きのように昆布または鰹節だけで取った出汁のみで、犬猫が中毒症状を起こさない具材を煮たものに味付け無しで作った雑炊であれば取り分けてあげる事も可能でしょう。
その際、人は取り分けてから味付けをすれば美味しく食べられます。
雑炊を犬猫に与えるメリット
バランスも良く、消化に優しい雑炊
食材をきちんと選び、食材を柔らかく煮た雑炊は犬猫にとっても消化に優しい食事と言えます。
犬猫にとって一番消化に良い食事は、犬猫の為につくられた総合栄養食であるペットフードです。
しかし、中には普段の総合栄養食であるペットフードに飽きてしまっていたり、食欲がわかず食べてくれないなんてこともあります。
そんな時に、炊いたお米を使って、具材を軟らかく煮た雑炊は消化にも良くエネルギー補給に適した食事となってくれます。
一般的に雑炊に使われるお米の糖質は三大栄養素のひとつで、すべての生命維持の基本となるエネルギー源となります。
また、肉や魚、卵、野菜等でたんぱく質やビタミン、食物繊維なども摂れるので、犬猫のために考えられて作られた総合栄養食であるドッグフードやキャットフードには及ばずとも、犬猫にとってバランスの良い食事には近づけられます。
雑炊だけで犬猫にとって必要な栄養を摂ることは困難ですが、普段のペットフードを食べてくれない時や、食欲不振などを起こしている場合には活躍してくれそうです。
水分補給も兼ねられた食事になる
夏バテや食欲の低下、嗜好が変わってしまったりと犬猫が急に水を飲みたがらなくなるケースが稀にみられます。
脱水症状は時に命の危険にも繋がる事があるため、愛犬、愛猫にはしっかりと水分を摂ってもらいたいと考えます
そんな時に、たっぷりの水分で煮る雑炊は食べてくれるだけで多少の水分補給が叶う食事と言えます。
犬猫が好む魚や肉などの香りがすれば、興味をそそり口にしてくれる可能性が高まります。
水分補給をメインとして考えるのであれば、具材は少なめにして汁気をしっかりと残した雑炊に仕上げるなど、飼い主の意向で調整できるのも雑炊のメリット。
雑炊だけで1日の水分補給をすることは難しいですが、少しでも補給してもらいたいと考える場合には有効的かもしれません。
ダイエットにも効果的?
雑炊は水分でご飯が膨らみ、水分もしっかりと摂れるので食べ応え、満足感が得られる食事です。
食欲旺盛で肥満気味の愛犬、愛猫の食事に雑炊を用意すればダイエットに活用できそうです。
脂の付いた牛や豚肉、鶏の皮つきなどの脂質の多い食材を避け、刻んだ野菜と共に少量のご飯をたっぷりの水分で煮たものを、普段与える量より減らした総合栄養食のペットフードに混ぜてカサ増しすれば、カロリーを抑えたうえで犬猫の満足感も得られる事でしょう。
ただし、この時炊いたご飯をたくさん使ってしまうと、エネルギーとして使われなかった糖質が脂肪として蓄積されてしまうので、あくまで脂質の少ない食材と少量のごはんを水分でカサ増しした雑炊用意するのがポイントとなります。
また、総合栄養食であるペットフードに混ぜる際も、普段と同じ量に雑炊を混ぜてしまうとカロリーを上乗せしてしまうだけとなりますので、1、2割程度減らしたうえで、低カロリーな雑炊を混ぜてカサ増しする事を忘れないようにしましょう。
まとめ
人用に作られた雑炊には犬猫にとって多すぎる塩分や糖分、また中毒症状を引き起こす食材を使っている危険性があるため、基本的に犬猫に食べさせてはいけません。
ただし、調味していないもの、昆布や鰹節だけの出汁で作る雑炊や、犬猫にとって危険な食材を使用していない雑炊であれば犬猫が食べても大丈夫でしょう。
柔らかく煮て作る雑炊は消化の負担も少なく、同時に水分補給が叶う事や、肥満などによるカロリー制限を考える場合、低カロリーな食材を使ったり、飼い主が量の調整などを行えば健康的メリットが得られる場合もあります。
雑炊を食べさせたいと考える場合には、使用する食材の確認に注意して上手に活用しましょう。