スパニッシュブルームとは
スパニッシュブルームは、マメ科属に属する常緑性の低木で、地中海沿岸地域を中心に分布しています。
その名前の通り、特にスペインで多く見られることから「スパニッシュブルーム」と呼ばれます。
日本には江戸時代初期頃に渡来したと考えられ、自生はしていませんが、庭木など観賞用や乾燥地の緑化目的で植栽されていることがあります。
枝が細長く垂れ下がる優雅な姿が特徴で、葉は非常に小さく目立たないかほとんど無く、6~9月の夏から初秋にかけて、鮮やかな黄色い花をたくさん咲かせます。
見た目も美しく、乾燥地でも育てやすいスパニッシュブルームですが、毒性成分を含むため、犬や猫にとっては危険な植物です。
レダマ(スパニッシュブルーム)の基本情報
学名:Spartium junceum、Genista juncea
英名:Spanish Broom、Gallomba、Gayomba、Genet、Ginesta、Ginestra
和名:レダマ、キレダマ、モクレダマ
科名 / 属名:マメ科 / レダマ属(スパルティウム属)
花言葉:「清らかな心」「謙虚」
スパニッシュブルームの主な毒性
スパニッシュブルームの主な毒性成分はアルカロイドの「シチシン」「スパルテイン」であると考えられています。
有毒部位は全株、特に種子に多く含まれると言われています。
スパニッシュブルームによる主な中毒症状
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 呼吸困難
- 神経症状
- 昏睡
スパニッシュブルームに含まれるシチシンは、ニコチンに類似することから、ニコチン中毒とよく似た中毒症状を引き起こします。
スパルテインに関しては心臓や神経に作用することがわかっており、過剰摂取はけいれんや呼吸困難を引き起こす可能性があります。
主な症状としては、消化器系の症状ですが、大量に摂取した場合や、毒性の強い種子であれば少量の摂取でも神経症状として震えやけいれん、歩行困難などがみられます。
摂取量や個体差によって重篤な症状を引き起こす可能性もあり、最悪の場合命に係わる危険もあるため、誤食がないように十分に注意が必要です。
スパニッシュブルームを誤食してしまったら
人間に対してですが、スパニッシュブルームの種子を誤食したことによる中毒事例は複数みられ、消化器系および神経系の症状を引き起こしています。
中には死亡例もあるとの報告もみられるため、人間より解毒作用能力の低い犬や猫が摂取した場合、少量であっても決して油断できません。
万が一、犬や猫がスパニッシュブルームを誤食したことがわかったら、速やかな対応が重要となります。
誤食量と部位を確認
スパニッシュブルームは特に種子が危険部位となります。マメ科の植物なので、花のあとに種子サヤができ、その中に種子が入っています。
未熟果は緑色であり、成熟すると黒色になりますが、未熟果の見た目が野菜のインゲンに似ているので注意しましょう。
種子ほどではありませんが、種子以外の部位にも毒性成分は含まれます。
これらも摂取量によっては重症となる場合がありますので、できる限りどれくらいの量を食べたのかも記録しておくといいでしょう。
速やかに獣医師へ相談する
スパニッシュブルームは摂取部位、摂取量によっては命の危険も考えられる植物です。
上記で解説したような中毒症状が現れていなくても、時間差で症状が現れる事があります。
症状の有無に関わらず、誤食が分かったら速やかに動物病院へ連絡し、獣医師の指示に従うようにしましょう。
その場では症状が出ていなかったり、軽度だからといって自己判断で様子見をすることは危険な場合もあります。少しでも不安があればすぐに動物病院で相談しましょう。
個人の判断で投薬や無理に吐かせることはしない
誤食が分かった場合、飲み込んでしまったものを吐かせたいと思う方は多いと思います。
しかし、素人の催吐処置は誤嚥などを起こしてしまう可能性があり、状態をより悪化させてしまう場合があります。
また、解毒剤や薬などを獣医師の指導なく与える事も大変危険なのでやめましょう。
スパニッシュブルームとレダマは同じ植物?
スパニッシュブルームを調べると、必ずといっていいほど「レダマ」という植物の情報が出てきます。
レダマは、スパニッシュブルームと同じマメ科の植物であり、見た目も類似していることから同一植物として扱われる事が非常に多くあります。
実際は全く同じではなく、スパニッシュブルームは黄色の花、レダマは白や淡い花であるといった違いがあります。
とはいえ、同じマメ科であることや、花の色以外は類似点が多く、また植物に含まれる毒性成分や有毒部位も同じであると考えられているので、同様の植物と考えられるでしょう。
レダマについても犬や猫が誤食しないように十分に注意しましょう。
まとめ
スパニッシュブルームは美しい観賞用植物ですが、毒性成分を含むので誤食がないように注意が必要です。
種子が特に危険とされ、摂取量によっては神経系の症状を引き起こすことがあり、最悪の場合命の危険も考えられます。
万が一誤食が分かった場合には速やかに動物病院へ連絡することをおすすめします。
スパニッシュブルームはご家庭のお庭以外でも、公園や学校、街路樹などで見かけることがあるでしょう。
犬や猫が有毒植物に近づかないように、日ごろから危険な植物の知識を蓄える事や、いざという時のために最寄りの動物病院やかかりつけの動物病院の連絡先を手元に控えておくといいでしょう。
参考:スパルティウム・ジュンセウム種子摂取後の中毒:3人の少年における用量依存的影響



