関節炎とは
関節炎は、加齢に伴って発生することが多い進行性の関節疾患で、痛みと活動性の低下を特徴とする疾患です。
なので犬猫ともに中高齢期に発症することが多いといわれています。
これは関節の間にある軟骨がすり減ることで、滑らかに動かなくなって関節の骨が摩擦を起こして炎症が生じる事で始まります。
水が溜まってしまったり、骨と骨がぶつかる事で骨にトゲのような突起ができて関節が変形し、腫れなどを伴う症状を起こします。
肘関節や股関節、膝、手首、足首などあらゆる関節に起こりますが、特に背骨に多く発生し、この場合は変形性脊椎症とも呼ばれます。
関節炎の症状
関節炎は痛みを伴う疾患なので、動くことに支障が出てくることが特徴と言えます。
- 軽快な動きができなくなる
- 元気がない
- 食欲の低下
- とぼとぼと歩く
- ジャンプをしなくなる
- 歩き方がおかしい
- 急に抱き上げると痛みを訴える
- 寝ていることが多くなり、活動が低下する
注意したい関節炎と肥満の悪循環
関節炎は上記で解説したように、痛みを伴う疾患であるため犬猫の活動に大きく支障をきたします。
関節が痛むので歩く、ジャンプ、走り回るなどの運動を嫌がるようになります。活動量が減ると、その分エネルギーの消費も減り、使われなかったエネルギーは脂肪となり体内に蓄積され肥満となるケースが多くあります。
肥満となり、体重が増加されると体を起こす際に関節への負荷がさらに大きくなりダメージを受けてしまいます。炎症の悪化は犬猫の活動、エネルギー消費を更に減少させます。
この負のループから抜け出せなくなってしまうと関節炎だけではなく、肥満を要因とした他の病気を併発してしまう恐れがあるので関節炎の場合には運動の制限と、減量などによって関節に負担がかからないようにすることも重要です。
関節炎の治療
この疾患に完全な治療法はないといわれています。
非ステロイド性消炎鎮痛薬や関節成分を含んだサプリメントの使用など、痛みを緩和する治療法が中心となる事が多いようです。
関節炎による痛みの緩和には関節への負担を軽減することが大切です。
肥満の場合には減量も治療のひとつであり、肥満でない場合も肥満にならないように体重の管理が必要になります。
関節炎への対策・予防
関節炎の治療に完全なものはないと解説しました。
そのため、犬猫の体をつくる基本となる食事管理がとても重要となります。
すでに発症し、獣医師から療法食やサプリメントが処方されている場合にはそちらをしっかりと与える事で改善されることが期待できます。
ただし、食事がかわると食べなくなる犬猫は多く、療法食をあきらめて普段の食事に戻してしまうと、関節炎で活動量が減っている犬猫にとってはカロリーオーバーで肥満の原因となる場合もあります。
その際には、肥満の原因となる脂質や糖質の摂取を控えて、関節を滑らかに動かすために必要な軟骨に有効的な栄養素を考えて手作りごはんを用意することで、関節炎を改善させるサポートに繋がります。
今は関節炎でなくても、加齢とともに軟骨がすり減る事は考えられるので、普段の食事から体重管理、骨や軟骨に有効的な栄養素を意識した食事を与えることは関節炎の予防になると考えます。
関節炎に有効的な栄養と食材
グルコサミン
軟骨を生成する基礎となるグルコサミン。関節部分の細胞の新陳代謝に重要な役割を担う成分です。
コンドロイチンと共に摂取することで相乗効果が期待され、関節炎や関節症の痛みの軽減や改善に期待がされています。
参考:関節痛に対するコンドロイチンおよびグルコサミンの有効性
おすすめの食材
- 山芋
- オクラ
- 干しエビ
- フカヒレ
コンドロイチン
コンドロイチンは軟骨や角膜、骨や臓器、皮膚などに分布し、保水性や弾力性を与える効果があります。
このコンドロイチンはもともと体内に存在している成分ですが、加齢とともに生産量は減少していくといわれています。
不足すると関節炎の原因となりますので、意識して摂取したい栄養素です。
おすすめの食材
- 納豆
- なめこ
- ウナギ
- ワカメ
- コンブ
カルシウム
骨や歯の元となるカルシウム。丈夫な体づくりには欠かせません。
軟骨の減少によって骨と骨がぶつかり、骨にもダメージを起こす関節炎には必要な栄養となります。
また、カルシウムにはストレス軽減の効果も期待されています。
痛みや、思い通りに活動できなくなる関節炎は愛犬、愛猫がストレスを感じる事が多いでしょう。メンタルケアにも役立つ栄養素も意識しましょう。
おすすめの食材
- ヨーグルト
- イワシ
- ゴマ
- ひじき
ビタミンC
強い抗酸化作用で知られるビタミンCは、コラーゲンの合成に働いて、骨を丈夫にする効果も期待されています。
このことから、ビタミンCは関節炎の発症を抑制することが期待されています。
近年このビタミンC(併せてビタミンEも)の過剰摂取は変形性関節症のリスクを増大する可能性があるとの報告もあります。
しかし、あくまで過剰摂取が問題であるので、適度な摂取はコラーゲンの合成に役立つと考えます。
過剰摂取には注意をし、1日の食事のうち1食に意識して適量を摂取するように心がけましょう。
参考:ビタミンCとEの血漿レベルが高いと、X線検査による変形性膝関節症の発症に関連しています
おすすめの食材
- パプリカ
- ブロッコリー
- カボチャ
- キウイフルーツ
- ショウガ
たんぱく質
たんぱく質は、糖質、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつです。
このたんぱく質は臓器、皮膚、被毛、そして筋肉などの組織を構成します。
良質なたんぱく質を摂取することは健康的な筋肉の維持に繋がります。関節炎で運動量が低下すると筋肉量も減ってしまう事が懸念されます。
健康的に活動するためには筋肉は必要不可欠なので、積極的に摂取しましょう。
しかし、脂肪分の多い動物性たんぱく質は肥満の原因となりかねませんので、肉を選ぶ際には脂肪分の少ない部位を選ぶなどの注意が必要です。
おすすめの食材
- 牛肉(スネ、スジ)
- 鶏軟骨
- 豚軟骨
- 鶏卵
- カツオ
- マグロ
- サケ
食物繊維
野菜や海藻、キノコなどに多く含まれることで知られる食物繊維は、便通の改善や有害物質を排出する役割、コレステロール値の低下作用が期待されている物質です。
関節炎で運動量が減る事や、治療として減量が必要な場合には食餌量を減らす必要があるため、便秘になる犬猫も多いかもしれません。
便通の改善と共に、コレステロールを下げて肥満の予防に効果的な食物繊維は関節炎に有効であると考えます。
おすすめの食材
- ゴボウ
- シイタケ
- グリーンピース
- ひじき
- わかめ
ビタミンB1・B2
ビタミンB1は疲労回復効果や糖質をエネルギーに変換する効果が期待されています。
また、B2は脂質代謝に有効な栄養素であるため、B1と共にダイエット効果が期待されています。
どちらも水溶性のビタミンなので、汁ごと与えられる手作りごはんに活用し、効率よく摂取できるように意識しましょう。
おすすめの食材
- 豚肉(赤身)
- マイタケ
- 青のり
- パセリ
- 豚レバー
まとめ
関節炎は犬猫どちらも加齢とともに起こりやすい疾患といわれています。
先天性や遺伝性など様々な要因でも起こるケースもありますので、老齢期でなくとも、元気なくとぼとぼと歩いていたり、抱きかかえると痛がるなどいつもと違うことがあれば動物病院での診察をおすすめします。
関節炎によって運動量が減る事で肥満となり、関節に更に負担がかかるというケースも多いので、肥満と関節炎は非常に密接な関係であると考えます。
肥満を予防することは関節炎の予防にもなり、関節炎になってしまったら体重管理をすることで症状の緩和に繋がります。
日ごろから骨や軟骨の健康維持に役立つ栄養や、肥満予防になる栄養を考えた手作りごはんを1日の食事に組み込むと、予防や対策に役立つでしょう。